陶房の風をきく ~陶藝家の父 富本憲吉展

明日より始まります富本憲吉展。富本先生といえば、四弁花や羊歯といった模様の色絵磁器が思い浮かぶ方も多いかと思います。

今回は先生の思い入れの強かった作品の一つである白磁の壺を中心とした展示となっております。もちろん、色絵の作品も一緒に並んでおります。


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随筆集など多くの言葉を残された先生。そこから白磁作品のこと、模様のこと、工芸観などに触れて参りたいと思います。




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壺を見る上で最も肝要なことは、その壷の形であり、
釉や模様は本體である形の上を飾るに過ぎない。
釉も模様も、美しさをつくりあげる上で
随分重い役目を果たしてゐることは勿論のことであるが、
形はその根元となり、
立體である壺としての生命の源泉である
(『製陶余録』白磁の壺、より)


こう語っておられるように、先生は陶磁器の基本は形であると考えていました。そのため白磁の制作にはことのほか力を入れたと言われています。

「料理の味をみる時、よき腕前の料理人は、計器など使はずに自分の舌を用ゐる。理屈ではない。直感がそこにある。」と例えるように、富本先生の轆轤作業すなわち成形もまた「理屈はなく、大方自然に近く生まれて来た直感そのものの力」だったのです。

そして、この形に対する直感というものは、あるときは日本刀を眺めて感じた美しさより、またあるときは信濃の高原で見た秋草の風景、神社仏閣から感じる古代日本人の清潔感、といったものから生まれているのです。そこには日本という国が脈々と受け継いで来た文化が影響しているといいます。

形を決しておろそかにしなかったからこそ、ご自分の手で轆轤を廻し、そして直感で引くことによって、均一で合理的な形ではなく、端正ながらどこか人の手のぬくもりや温度をまとった作品となったのだと思います。



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端正で美しいこの白磁の壺。
なでるたびにそのとろみのある触感にうっとり。





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模様や色で飾られた衣服を脱ぎすて、
裸形になつた人体の美しさは人皆知る処であらう。
恰度白磁の壺は飾である模様を取り去り、
多くの粉飾をのぞきとつた最も簡単な、
人で言へば裸形でその美しさを示すものと言へよう。
(『製陶余録』白磁の壺、より)


こう言わしめるほど、富本先生は白磁の壺に強い思い入れをお持ちです。


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一つ一つ、違った印象を受ける今回の壺たち。何とも言えない柔らかさを感じるものや、凛とした強さを感じるもの。そして何よりいつまでも眺め飽くことのない作品ばかりです。

ご来苑お待ちしております。




陶器を愉しむ者は實用を無視して
単にその形だけを見、模様だけを見、また釉だけを玩ぶ可きでない。
譬喩を用ゐて陶器の美しさを見る上での考へをかくなら、
形は樹姿であり、釉はその樹の枝であり、模様は葉である。
(中略)
樹と葉を楽しむもの、常盤木の松とか杉とかは
丁度無地の青磁や白磁の壺を楽しむに似る。
(『製陶余録』美術陶器、より)


模様と釉、形については次週見て参りたいと思います。







【陶藝家の父 富本憲吉展】
開催期間:2020年2月21日(金) ~ 2020年3月3日(火)

休業日:定休日27日(木)とあわせて
ビル休館日のため3月1日(日)もお休みいただきます。

Father of Japanese Studio Pottery TOMIMOTO Kenkichi
Exhibition : February 21 to March 3, 2020
※Closed on Thursday February 27 and Sunday, March 1






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撮影:土門拳
東京/祖師谷の自宅にて 昭和14年








(恭)



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