陶房の風をきく ~作陶二十年 加藤亮太郎展

東京の街中の木々も少しずつ色付き始めました。
今年も2年ぶり6回目、加藤亮太郎先生の個展が始まります。作陶二十年という節目の年を迎え、亮太郎先生にお話を伺いました。


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●二十年という節目
特に二十年だからということではなく毎年のことではあるけれど、個展ではいつも窯ごとに選りすぐりの作品を出したい、とおっしゃる亮太郎先生。

大学院を卒業後、家に戻り、修業のような下働きの中で釉薬の研究を続け、三十歳のときに本格的に作品を発表されました。十年ほど前、武者小路千家 若宗匠との出会いが大きなきっかけとなり、桃山陶へと向かうようになったそうです。



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今回は、桃山陶のコアな部分を出したいというお気持ちから、全て穴窯焼成の志野、瀬戸黒、織部を出品してくださっています。
使う穴窯は2つ。祖父卓男先生(六代、平成七年に国指定重要無形文化財保持者)の代から使う大きなものと、二年前に造った引出黒専用の窯。大きなものは年に四回ほど、小さなほうは年六回ほど焚かれるのだそうです。味わい、素材の良さの出る穴窯作品。

今回も数回の窯焚きの中から選りすぐりのものが並びます。

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●京都と桃山の融合
先生にとってお茶碗の原点は、手びねりのものなのだそうです。今回も丸い形の手びねりの作品があります。

学生時代を京都で過ごされた先生にとって、ご自分の中の京都、それは楽茶碗。昔から京都と美濃は、お互いに真似し、真似されてきた歴史がある。それを自分に置き換えてみると、手びねりで作った茶碗が美濃の釉薬をかけるとどうなるのか…王道の桃山陶ではないかもしれないが、融合したものなのかなと考えているのだそうです。


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No.11 志野茶碗



●志野と瀬戸黒は相反する関係
志野は1300℃の高温の世界。土、釉薬、鉄が火の力で変化しますが、それは5日ほどかけてじわじわと変わってゆき、じわじわと冷まします。
一方で瀬戸黒は、灰のかかった美しさを持ち、窯の中で酸化、還元を繰り返し、一瞬のタイミングで引出し、固着させます。急冷させる点も相反する点です。

今回は全て穴窯焼成ですので、それぞれの持ち味を存分に味わっていただくために、見るだけではなく、実際に触って、お茶をのんで口をつけて、確かめていただきたいとおっしゃいます。


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●ゆらぎのある轆轤仕事
以前と何か変わったことをお聞きしたところ、あまり人にはわからないかもしれませんが…とおっしゃいながら、轆轤のひき方が変わったと教えてくださいました。

桃山陶はへうげやゆがみといった、いわゆる動的なものと捉えられていますが、亮太郎先生の中では、轆轤仕事の段階からすでに完全美ではなく、ゆらぎのあるものと捉えているのだとか。きっちりと均一にひくのではなく、両手を使っても、人のバイオリズムようなものが加わってゆらぎを感じるような造形。そういったことを意識して轆轤をひかれているのだそうです。


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●「決定力」は書から
書は書家の石川九楊先生に師事し、すでに二十年以上学ばれているそうです。

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紙に一瞬の判断で書いていく作業は、筆を箆に変えただけで、実は作陶にも大きな影響を与えてくれるのだとか。
絵付けはもちろん、釉がけの作業もそうですが、特に高台を削るときにその影響を強く感じるそうです。
構成力、造形力、そして何より一発で決めるその「決定力」は書から学んでいますね、と亮太郎先生。


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その筆使い、箆使いをぜひご覧いただきたいです。






●脈動するやきもの
最近のことではないですが…と、心をぐっと持ってゆかれた経験について教えてくださいました。本阿弥光悦の乙御前(おとこぜ)。実際に手に触れ、口をつけお茶をのんだときのことだそうです。
それだけでも驚きですが、やはり何とも言えない震えるような感動を覚えたのだとか。見たことがあるというというより、手や口に触れてみたとき、その造形の素晴らしさ、色や質感が、それこそ脈動するように感じられ、生死のやりとりなどを経た、その生々しさ、清濁併せ持った美しさに触れ、深遠をのぞきこんだような感覚だったと振り返っておられます。

今回の図録に寄せてくださった文章に
『一塊の土くれが、心の臓のように脈動し、火によって美という永遠がもたらされた。』とあります。
心の臓のように脈動し、というのはまさに、このときに感じた感覚を表わしているのだそうです。

<赤樂茶碗 銘 乙御前>
本阿弥光悦(1558~1637)の赤楽茶碗を代表する作品の一つである。光悦は元和元年(1615)に京都・鷹ヶ峯に庵住するようになって後、本格的に楽焼の製作を始めたが、光悦の赤楽茶碗は黒楽茶碗に比べ個性的な作風が多い、この茶碗もふっくらとした姿を作り出しており、銘の「乙御前」(ほほのふくらんだお多福)にぴったりの作風を示している。口縁に起伏を作り出し、端部を内や外に反らせ、底には小さな円盤状の高台をつけるなど、光悦ならではの自在な造形を作り出している。
(文化庁 国指定文化財データベースより)


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●生涯をかけて追いたいもの
四十五歳になられた亮太郎先生。若手陶芸家と呼ばれていた「若手」がとれ、名実ともに中堅となられた今、初めて同じ土俵に立った気持ちです、とおっしゃいます。これからどんな目標があるか伺いました。
先生の中でのNO.1のお茶碗は国宝「卯花墻(うのはながき)」なのだそうです。生涯をかけて追いたいというとおこがましいですが・・・卯花墻のような何百年後まで残っていくお茶碗を作りたいとおっしゃいます。
お茶碗が特別に感じられるのは、手にとった方がやはり想いを込めて大切にし、その方もしくは作者が銘をつけ、歌を付け、と大事に大事にされていくものだから。自分の痕跡を残すために、生涯に1つでもいいからそんなお茶碗をつくってみたい。そのためには、その年代で作れるものを作っていく。半分は火によるところも多いので、たくさん作っていくしかない。
そう語ってくださいました。

<志野茶碗 銘 卯花墻>
志野随一の名碗として知られる。天正年間に大萱牟田洞で作られたものと推定され、志野の代表的名作として有名なものである。
(文化庁 国指定文化財データベースより)




会期中は亮太郎先生自ら、お点前をしてくださってお呈茶を予定しております。
お道具はもちろん先生の作品です。
ぜひお立ち寄りくださいませ。
お待ちしております。




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【作陶二十年 加藤亮太郎展】
開催期間:2019年11月15日(金) ~ 2019年11月19日(火)
Exhibition of KATO Ryotaro
Exhibition : November 15 to November 19, 2019

作家在廊:会期中全日程




(恭)



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