小山智徳先生の織部のさけのみ
昨晩、ハロウィンで賑わう渋谷を離れ、最寄駅からの帰り道、空を見上げると大きな三日月が空に浮かんでいました。秋が深まり、一段と空が澄んできたようです。今日から11月ですね。2023年まで残すところあと2ヶ月と思うと焦るような気持ちになりますが、これからは紅葉の美しい時期。外に出て、赤や黄に染まる木々に彩られた街や山の散策を楽しめたらと思います。
さて、本日は、小山智徳先生の手による織部のぐい呑をご紹介いたします。厳寒の地・長野の戸隠の山中に、自宅と工房を併設する登窯を築き、薪を割りながら黙々と制作されている小山先生。当苑で個展をさせていただくようになってから30年が経ちますが、型打ちを丹念に行い、豊かな造形、そして、愛らしい絵付けを加えていく…織部一筋に取り組まれるその姿勢は変わることがありません。
魅力的な作品がたくさんがありますが、今回は、色彩と絵柄の両方を楽しむことができる鳴海織部さけのみと弥七田織部のさけのみをご紹介します。
鳴海織部さけのみ
5.3 / H5.6cm 22,000円(税込)
ご承知の通り、鳴海織部は、白土と赤土と継ぎ合わせて成形し、白土の上には緑釉、赤土の上には白泥や鉄絵で文様を描いて長石土灰釉をかけたもので、鮮やかな緑釉と、淡い赤色の上に、鉄絵の意匠が広がる重層的な魅力が特徴です。この作品では、正面に描かれた斜めに連なる円。一番上の小さな点と横棒が里山を歩くあひるの横顔のようではありませんか。口縁からやや不規則に垂れる緑釉のたまりも心地よいリズム感を生んでいます。
鳴海織部さけのみ
5.3 / 6.5 / H5.1cm 22,000円(税込)
指を添えるのに丁度よいくぼみがある沓型のさけのみ。ひとつ上の作品よりひとまわり大きく、その形と相まってしっかりとした存在感があります。表と裏で異なる意匠が広がっていますね。赤土の見え方もだいぶ異なります。そして、見込みに引かれた二本線。お酒をいれるとゆらゆらと波のように揺れるのでしょうか。右手に、左手にと持ち替えながら、お酒と器の取り合わせを楽しまれるのん兵衛さんの姿が目に浮かびます。
弥七田織部八角さけのみ
5.5 / 3.4cm 22,000円(税込)
小山先生は個展のたびにご自身のお言葉を寄せてくださっています。今回ご紹介するにあたり、過去の展示会の記録を見返していたところ、2021年の個展の際にいただいた文章に、先生の魅力がつめこまれているように思われましたので、改めてご紹介させてください。
自分の仕事を振り返ると 登り窯で焚くこと 織部を作ること 道具の器であることの三つに集約される
他に何もない 古典に倣う事も入るかもしれない
かたちは使うことから生まれたものが好きで 姿は愉し気なものが好き
異素材の工芸からの借用ということが嘗ての焼き物の姿を豊かにしたところはアリだとおもう
織部焼の思想というのは唐突なものではなくて大和歌や俳句に近い(勘だけど)様式を持つことで
自在性を獲得した短詩系工芸かもしれない・・・などと思ってみたり
小山智徳
戸隠に広がるであろう錦のような紅葉を思い浮かべながら、小山先生のぐい呑みで秋の夜長を愉しくすごしてみませんか。気になる作品がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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