手触り
今だ!とばかりに、傘を開かずに出られる隙を狙って買い物に出ようとすると、また降ってくる。そんな繰り返しを何度かして、出かけるのをあきらめた。くすぶった気持ちでいると、聞こえてきた。この時季になると始まる保育園の子供たちの盆踊りの練習の曲。毎年聞いているので、歌詞を覚えてしまった。窓を開けると円陣が見え、先生は祭りのハッピを着て踊っている。「手拍子叩いて~」と調子のいいメロディー、子供たちの可愛らしい声と手拍子とともに、気分が明るくなった。
『長岡絢美展』が初日を迎えました。当苑で女性の作家さんは少なく稀少で、待ち遠しかった個展です。優しい気持ちになれるような、そんな展示です。長い自粛生活で疲弊気味の心に穏やかなリンゲルになるに違いありません。
絢美先生の作品。轆轤の力を借りず、ご自分で手びねりされる。その器たちに先生の想像力が自由に動く絵が描かれる。実際にこの世に存在する動植物が、そこにいることもあれば、初めてお目にかかる生命体もいる。それらが、実に伸び伸びとした筆使いで濃淡の呉須で描かれる。見ていると、先生の子供の頃の様子が想像できる。さぞかし想像力の豊かな感受性の鋭いお嬢さんだったに違いない。
触れると、その微かで滑らかな凹凸が絵柄と溶け合って何とも心地よい手触りとなる。冷たい磁器がこちらの手に沿うような不思議な感覚。
革表紙の本があって、習い事の先生から頂いたものだった。本に収められたお話もお気に入りだったが、何よりも革の手触りが好きだった。夜、薄暗がりで本棚の本を探す時も、端から背表紙を指で撫でていくと、ぴたりと探り当てられ、子供の手に持て余すような嵩ばかりのするそれに触れると、なぜか気持ちまで落ち着いた。
絢美先生の作品の手触りが、あの時の感覚に似ていてハッとした。
前回の個展で、帰り際に先生が握手をしてくださった。絢美先生の華奢な体躯からは考えられないほど、力強くて驚いた。「ね、力があるのよ!」と微笑んでいらしたのを思い出した。
(藤)
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