陶房の風をきく ~唐津 矢野直人展

早いもので、もう5月が終わろうとしています。新緑が美しく、風も爽やかで、本来の5月はとても好きな季節ですが、今年の5月はずっとぐずぐずしていましたね。

昨年の今頃は緊急事態宣言による初めての臨時休業から明けて、ようやく始動した頃。5月の楽しみを2年連続お預けされたような気持ちです。早く大手を振って外へ出たいと祈りつつ…

さて、明日より矢野先生の個展が始まります。
個展に向けて、お話を伺いました。



●「唐津」を作るために必要な変化を求める

毎回、どの作家さんにも個展に向けて何かテーマやこういうものを見せたい、ということをお聞きしています。


『今回特別に意識していた事はないのかもしれませんが、年約10回の窯焚きの度に色々な事を試していると思います。一目で大きな違いが出る様な事はないのかもしれませんが、常に「唐津」を作る事が目標なので、少しずつでも近づける為に必要な変化は求めています。

一年で変わってきたと感じる事もあるかもしれないし進みたくても止まったままの事もあると思います。これで良いと思っている素材など少しはありますが、良いと思っていても作りや焼けで違いが出てきますし、難しさも感じます。今回に限らず求め続ける事がテーマなのかもしれません。』




絵唐津などに使っている素材
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●自然と表れる癖が個性になる

先生の作品はとてもシンプルなものが多いように思います。それでいて、作り手が矢野先生だということがよくわかります。
そこは何か意識しておられることがあるのか伺ってみると、


『わかるのは癖があるからだと思います。この癖というのは、好み、作りの癖、窯の癖などを指すのですが、癖というのは個性になり楽しさが出てくると思います。

そして、その癖が自分の癖ではなく、唐津の特徴である事が目標です。自分が作ることのできる唐津、というより「唐津らしい唐津」を意識しています。全ての作品ではないですが多くはこの様な事を考えながら作っています。』



●足すことから離れる、足さないということ

好みや、作りの癖、窯の癖までも自分のものではなく、唐津だからこその特徴でありたいという矢野先生。徹底して足すことから離れることを意識して作陶されています。


『唐津を作るために必要と思っている事

自分をたさない 
見どころを強調しない 
唐津をどれだけ知ることができるか

この3点はここ数年意識している事です。』



●梅雨の季節を感じるものを

前回もおっしゃっておられましたが、当苑での個展は毎年6月頃。そのため、年間を通して梅雨の季節を感じるものが出来たときは当苑の個展を思い浮かべてくださるそうです。


『毎年梅雨時期に展示会をさせて頂いているので、雨のイメージや爽やかなイメージのものを出しています。』


今回いくつか届いた斑唐津の中にも、やや青みがあり、よく流れている印象を受けるものがあります。実際に、斑の釉薬はよく調合を変えているそうで、その中でもよく流れたものを出してくださったのだとか。


『今回の流れる斑は梅雨時期にキリっと爽やかな冷酒のようなイメージで選びました。』



●白瓷は唐津の兄弟

また、久しぶりに大きな白瓷壷が届いています。


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先生にとって白瓷はどんな存在なのでしょうか。あまりにざっくりした疑問だなぁと自分でも思いつつ、ぶつけてみると…


『伊万里や李朝の白瓷は唐津の兄弟のように思っています。
李朝白瓷の技術から、唐津の素材で唐津、有田の素材で初期伊万里、と続いていくので、李朝、初期は唐津の兄弟なイメージです。』


その兄弟という表現のされ方に、とても先生らしさのようなものを感じました。ご自分が作りたいものは古い唐津焼のもつものを、どう今の環境で作っていくか、表現するかということ。余計なものを足したり、殊更に自分を出したりせず、きっと白瓷を作るときも、瑠璃釉で作るときも、同じように意識されているのだと思います。




そして、先生が好きな壷は、大阪市立東洋陶磁美術館の白磁壺、そして日本民藝館の白磁壺だそうです。


参考) 白磁壷
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大阪市立東洋陶磁美術館蔵(新藤晋海氏寄贈) 
写真:六田知弘

大阪市立東洋陶磁美術館HPより
https://jmapps.ne.jp/mocoor/det.html?data_id=2037



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「たくみ」第23号 朝鮮工藝特集(1954年 東京民藝協会)で、柳宗悦はこう言っています。

『朝鮮の品は、(~省略)いとも静かなのである。饒舌である場合はない。それ故騒々しい場合は無い。(~省略)決して力んだりして作られていない。只作られているのである。禅ではこの境地を「只麼(しも)」というが、朝鮮の品々の美しさは「只の美しさ」なのである。狙った美しさなどではない。おのずからの美しさ、おのれなりの功徳というまでである。ここにこそ、汲んでも汲みきれぬ美の泉があると云ってよい。例えば「井戸」の美というようなものは、そういう只の美なのである。だから普通にいう美の範疇には入らぬ。もう一つ奥が深い。』



まさに、そういう境地へ向かおうとしているのが矢野先生なのかなと思います。古唐津や初期伊万里、李朝白瓷から学び、「唐津」をどう作ってゆかれるのか。注目していきたい作家さんです。
ぜひご高覧くださいませ。

今回は残念ながら先生の在廊は叶いませんが、毎日1つ作品解説をお願いしております。どうぞお楽しみに。





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【唐津 矢野直人展】
開催期間:2021年5月28日(金) ~ 2021年6月1日(火)

Exhibition of YANO Naoto
Exhibition : May 28 to June 1, 2021



<矢野直人 / 陶歴>

1976年 佐賀県唐津市に生まれる
1994年 アメリカに5年間留学する
2002年 佐賀県立有田窯業大学校を卒業する
2003年 佐賀県立有田窯業大学校嘱託講師として勤務する
2004年 自宅 殿山窯にて作陶を始める
2008年 韓国 蔚山にて6ヶ月作陶する
2015年 割竹式登窯を築窯
以降、各地で個展やグループ展を多数開催する



一部ではありますが、当苑HP展示会ページより
出品作品をご覧いただけます。
ご自宅でもお楽しみいただければ幸いです。

*明日 28日(金)13:00公開予定です。



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ご入店時のお願い

新型コロナウイルス感染拡大防止の為、
ご来苑のお客様には手指の消毒と
マスクの着用、また検温をお願いしております。
ご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
※検温につきましては37.5度以上のお客様にはご入店をご遠慮戴きます。

なお、マスクをお持ちでないお客様にはマスクを差し上げております。
スタッフまでお申し付けください。

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今回の作品の一部
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展示室
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割竹式登窯
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(恭)


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