陶房の風をきく ~梶原靖元展

明日より梶原靖元先生の個展が始まります。
今回、今までの先生の世界観からは、一見するととても大きく旋回したような印象を受ける作品が多く届きました。
先生の中で起こった変化の波はどうやって来たのか、個展を前にお話をお聞きしました。


●陶房の外へ

今まで先生が行かれるところ、その多くは窯跡や原料のあるところ、もしくは個展会場の近辺ばかりだったといいます。それがこの1年くらい、焼き物とは直接関係のない様々なところへ行かれているというお話はちらほらと伺っていました。

元々好奇心旺盛な先生。唐津を出た途端に、新たな好奇心がムクムクと膨らんで来たご様子。今回の個展のテーマは、そういった旅先でインスパイアされたものを表現したものとなりました。

旅先で風景をスケッチし、その土地土地で様々なものを見聞きし、いろいろな展示を見ること、一つ一つがどれも刺激となり、先生の自由な精神はさらに解放されている印象を受けました。



image1.jpeg
スケッチ  長野/諏訪大社春宮


image0.jpeg
スケッチ  新潟/小滝翡翠峠



●新風を感じて

また、今回の作品の多くは、手びねりでされています。轆轤が出来る人は基本的には手びねりはやらない方が多いそうで、先生も長年轆轤にこだわりを持っておられました。ですが、この一年くらいでこだわりを取っ払って、やってみたくなったのだそうです。

いざやってみると、『口は揃わないし、一つの作品を作り上げるのに時間もかかる。轆轤に比べるとどうしても生産性という意味では劣ってしまうので、作る作品は自然とART寄りになっていった』のだそうです。

先生にとってARTとは美しいもの。先生曰く「最近のドロドロとした美しくない傾向のものではなく、いやらしさのない自然の美』それを表現すること。それがこれからやっていかれる主題となりそうです。



●土探し

しかしながら、今までやって来たことを手放すのではなく、あくまで姿勢はあまり変わっていないとおっしゃいます。土や釉薬を追求していくということでいうと、今回のARTWORKは、新たな土探しでもあるのだとか。


例えば、こちらの作品。

「蜜月」
No.54-3.jpg
蜜月.jpg

蜜月という何とも意味深な題名のついた作品です。お子さんが小さかった頃に拾って来て、ずっと家にあったものをガラス釉をかけて焼いたものだそうです。石は高温で焼くとまたマグマ状態に戻り、その中に含まれる成分を出そうとします。ガラス釉をかけることで、出て来た成分をガラス釉に溶け込ませてみると、色がよくわかるのだそうです。


No.1-1.jpg
「花山里(ふぁさんり)」


DM作品の花山里(ふぁさんり)も同様。韓半島の南にある「花山里」という小さな村では、数百年前に白磁が焼かれていたといいます。この土地の、当時原料に使われていたと思われる絹雲母の原石を焼いたものです。


こうした試みは、今までも行っていたことであり、ご自分がこれを使って焼きものを作りたいと思えるものを、より広く全国の原料を見て探していこうとされています。




●写しと個性

さらに今回は出土品のようなものが多く見られます。古唐津を研究し、土や釉薬を追求してゆく結果、朝鮮陶、中国陶へも造詣が深い先生ですが、今はそれがたまたま縄文、弥生、古墳時代になったということなのだそうです。



仮面をかぶった醜い土偶
No.109-1.jpg
No.109-2.jpg

仮面をかぶった土偶というものは実際に存在する土偶だそうです。ただ本歌は取り外せる仮面ではなく、こちらはそこからインスパイアされた先生のオリジナルの表現として、仮面が別になっています。仮面の下の土偶も実際に先生がご覧になったものを写したものなのだとか。


まず新しいものを取り入れるときには、たいてい写しをしてみるとは先生談。発展させるのはそれからのこと、だそうですが、そこは梶原先生。肥前狛犬を初めて拝見したときも「カジハラ狛犬」でしたが、今回も本歌取りをしたこれらの作品は、白瓷の動物含めすでに「カジハラ流」を感じ、先生の個性があふれ出ています。




白瓷の動物
No.68-1.jpgNo.70-1.jpg

こちらもとても個性的な作品ですが、先生のオリジナルではなく、古墳から出土されたものを写したもの。大きさもちょうどこんな感じだったとか。




縄文白瓷筒
No.95-1.jpg

縄文土器の縄目にインスパイアされた作品。もともと縄文土器というのは、一説には轆轤は使われていないと言われているそうで、今回手びねりをするにあたり参考にされたそうです。






image4.jpeg
先生が見て来られた本歌の土偶たち




●用途を超越した名品を

そして、今回出品されたお茶碗の中には手びねりのものがいくつかあります。林檎シリーズです。この一年で信州方面へ行かれることが多かったという先生。もともと有田ご出身で、比べてその土地で食べた林檎がとても美味しかったそうです。


青林檎茶碗
No.128-1.jpg



そんな由来のお茶碗ですが、手びねりでは光悦の乙御前(おとごぜ)(注1)のようなものを作りたいと思っておられるのだとか。この乙御前は茶碗作りという意味で、技術的には少々落ちるけれども、やはり一級品であるというのは誰もが認めるところでもあります。先生も名品というのは用途を超越していると感じておられるようで、そういったものを作りたいというお気持ちが強いそうです。



注1)本阿弥光悦 赤樂茶碗 銘 乙御前(おとごぜ)~文化遺産オンラインより
本阿弥光悦(1558~1637)の赤楽茶碗を代表する作品の一つである。光悦は元和元年(1615)に京都・鷹ヶ峯に庵住するようになって後、本格的に楽焼の製作を始めたが、光悦の赤楽茶碗は黒楽茶碗に比べ個性的な作風が多い、この茶碗もふっくらとした姿を作り出しており、銘の「乙御前」(ほほのふくらんだお多福)にぴったりの作風を示している。口縁に起伏を作り出し、端部を内や外に反らせ、底には小さな円盤状の高台をつけるなど、光悦ならではの自在な造形を作り出している。






今回、作品が到着して荷をひらいてみると初めての手である作品が多く、その変化に少々驚いたものですが、お話をじっくり伺ってみると新たなステージを目指して展開しようとされていることがよくわかりました。そして、先生ご自身はなんの気負いもなく、いたってナチュラル。いつもの先生なのでした。

唐津に新しい潮流を起こしたように、きっとまた何かやってくださるのではないかという期待が膨らみます。
膨大な知識と、しっかりとした土台を持った先生の唯一無二の個性。新たにどんな風に「化けて」ゆかれるのか、今後がとても楽しみになりました。

ぜひご高覧いただけますと幸いです。






image3.jpeg
北アルプス




◇◇◇

【梶原靖元展】
開催期間:2021年1月29日(金) ~ 2021年2月2日(火)

Exhibition of KAJIHARA Yasumoto
Exhibition : January 29 to February 2, 2021

作家在廊:会期中全日程(予定)


< 梶原靖元 / 陶歴 >
1962年 佐賀県に生まれる
1980年 唐津の江口宗山に師事する
1989年 京都の大丸北峰に師事する。
           有田、唐津、京都など各地で修行を重ねる
1995年 唐津市和多田にて独立する
1997年 相知町にて穴窯を築窯する
2001年 佐里にて築窯する
2002年 韓国古窯址を調査
2003年 韓国古窯址にて3カ月間研修
2009年 中国河南省汝窯青瓷古窯跡視察
2012年 「韓日會寧陶磁展」出品
    韓国梁山にて作陶
2013年 韓国通度寺にて作陶
2014年 井戸茶碗古窯後 白蓮里、頭洞里の原料視察
2015年 高麗白瓷古窯跡 楊口、驪州視察


◆◆◆

ご入店時のお願い

新型コロナウイルス感染拡大防止の為、ご来苑のお客様には
手指の消毒とマスクの着用、また検温をお願いしております。
※検温につきましては37.5度以上のお客様にはご入店をご遠慮戴きます。

なお、マスクをお持ちでないお客様にはマスクを差し上げております。
スタッフまでお申し付けください。

また、店内が混み合うのを避けるため、
入店時の人数を制限させていただく場合がございます。
ご了承くださいませ。

ご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

◆◆◆

今展示会はご自宅でもお楽しみいただけます。
https://www.kurodatoen.co.jp/exhibition/20210129/
(公開予定:1月29日(金)12時)

HP掲載以外にも多数作品がございます。
お気軽にお問合せくださいませ。




(恭)

※無断転載、再配信等は一切お断りします。
黒田草臣ブログ: http://01244367.at.webry.info/
しぶや黒田陶苑のホームページ: http://www.kurodatoen.co.jp/