ピンホール

車を運転をして通る時、運転席の窓越しから、にわかに淡いピンク色の光が差し込んでくるのが好きで、毎年この時期になると、その道を通ることにしている。もちろん、車で通り過ぎるのだから、ものの1分もかからない距離なのだけれど、桜の花の力で車内の空気の色が変わるのは特別な感覚で他では味わえない。今年は、世の中が浮かれてばかりもいられない状況なだけに、いつもより少~し速度を落として、その光を浴びた。

24()まで開催していました走泥社のメンバーのお一人であった益田先生の『硝子 益田芳徳展』に続き、『オブジェ焼 八木一夫・山田光・鈴木治・益田芳徳展』を本日より2週にわたって開催いたします。益田芳徳先生の別の作品も展示されますので、外出を控えがちな時期ですが、お運びくださいませ。


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益田芳徳先生のオブジェ作品。
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今回も店内に参考資料を置いておりますので、お手に取ってご覧ください。
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お花はお休みです。床の間には八木一夫先生の作品が飾られています。
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「陶板」
「ニュートンの耳」

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「万有引力」を発見したニュートンの名を冠した作品。法則に関連のあるリンゴの断面。右側半分が耳。

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マットな黒の陶板にはポーンとゴミ箱に向かってを放り投げたようなクシャッと潰した空き缶?

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上方には昔のピンホールカメラの様な穴が開いています。
彫られている言葉「PARTINGS LONG SEEN COMING」
どこかで聞き覚えのある言葉だなと…そうそう、ベン・シャーンの作品にも同じタイトルの作品があり、観たことがあったのを思い出しました。穴から覗くと映画の1シーンが見えてきそうな気が。


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山田光 「黒陶陶板」
八木一夫 「黒陶 喝采のスペース」

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タイトルの様に喝采が聞こえてきそうな大きな大きな手。展示してある反対側から見ても、肉厚のどっしりした手。

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親指が平たいヘラのよう。艶のある黒々とした黒陶が手の存在感をさらに際立たせています。


オブジェ焼でない作品も展示しております。
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粉引茶碗 共箱
所載: 「近世の茶碗(三)」



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「白酒盃」 共箱

13才で京都市立美術工芸学校彫刻科に入学した八木一夫先生。卒業後、商工省陶磁器試験所の伝習生として沼田一雅の「日本陶彫協会」に入会し陶彫を学んだ。その後、兵役、神戸や京都での教員生活を経て、昭和21年より陶芸に専念するようになる。作陶を始めた当初は、古い中国や朝鮮の焼き物に関心を持っていたが、絵付けにはクレーやピカソに共感を覚えていたという。鉄象嵌や掻き落しを主たる技法としながら、表面に抽象絵画のような意匠を施した白化粧の壺を盛んに制作していた頃もあった。そのうち、ご自身で創案された黒陶の作品を作るように。低温で焼くため変形・収縮が少なく、黒い表面が火跡を隠す。土が持つ造形が焼成による火の姿を消して軟らかな質感が生まれる。だから、表面がまるで黒御影石の様なのだろう。その他、ガラスにも挑戦されている。

原始的な器には「つくりもの」というのではなく、「できごとのように、おのずと生まれ落ちたもの」がある

オブジェ焼きに突き進まれたことが窺い知れる先生の言葉。若い頃、よく博物館に足を運んでいらした先生。幾つもの展示室を観て最後に行き着く弥生式の土器にホッとしたという吐露も。古代の人々の生活を思い描かせることもなく、ただただ無心な表情で置かれていることに先生は安堵感を覚えた。それらの土器から、ご自分の仕事を省みもされた。前述のように様々な作品に挑まれたのは、まさしく、自らの意図する創造のみに捕らわれる作品を作ることを排除しようとしたからではなかったかと想像する。

しかし、今回の展示作品を拝見しても分かるように、先生は決して、伝統的な陶芸そのものを否定したのではなかった。オブジェ作品をつくる一方で、生涯を通して茶碗や壺の制作も続けていらした。そのことは、原始の人々が土をひも状にして器を形作っていたように、土に対する深遠な愛情を持ち続けていた証ではないか。

「陶板」に開けられていたピンホールから覗き見たら、そんな精神が垣間見えやしないだろうか…。


(藤)




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