陶房の風をきく ~ オブジェ焼 八木一夫・鈴木治・山田光・益田芳徳展

今週から始まります【オブジェ焼 八木一夫・鈴木治・山田光・益田芳徳展】。
4月7日まで2週に渡り、ご紹介いたします。

まずは、走泥社の中心人物でもあった八木先生。多くの作品で様々な表情を見せてくれる先生は、日本のやきものの中心地、京都・五条坂で生まれます。

戦後、日本の陶芸界に先駆的、前衛的な集団として知られる「走泥社」を創設し、長い歴史を持つ日本のやきものという概念を根底から覆すような、その制作活動は今なお大きな影響を与えているといえます。

「才の八木、行の鈴木、知の山田」と呼ばれ、長年にわたり親交を重ねた小説家・司馬遼太郎をして「天才」といわしめた八木先生はどのような方だったのでしょう。


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陶工の父を持ち、環境は揃っていたものの、美術の成績は10段階で6以上をとったことがなく、どちらかというと音楽、それもクラシックに興味があり、お金ができると喫茶店(今でいう名曲喫茶でしょうか)に行って音楽を聴くのが好きだったそうです。

こどもの頃からやきもののなかで育った先生が、やきものをやきものとしてきちんとながめるようになったきっかけ。それは第二次大戦時に軍隊でアルミのお皿で食事をしたことでした。なんという情けないもので食べなくちゃならないんだ、と思ったのだとか。

そのときに、

「ああやきものちゅうふうなものは、自分の暮らしておる心とは、かなり深いところで、かかわりがあるのではないか」

という実感を持ったのだそうです。

先生の言葉で言うならば「やきものと本当の意味で関わりができたのは、やきものが無くなった世界において初めて、私の目の中に入ったのです。心の中でやきものというものを捉えたのです」『八木一夫著 刻々の炎(私の自叙伝)』より



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オブジェ焼を作りだしたのはどういうわけか、ここでも述べておられます。


「やきものつくりの現実からいうと、いくら新しいものをこしらえようとしたって、轆轤でつくったら、みんな円くなるし、左右がシンメトリーになります。そこから無理に変えようとしたところで、このシンメトリーな神経からは外れることはできない、もっと新しいものをつくろうと思ったら、そういうものをぶっこわすしかない。

それは例えていうならば、現代人の語彙、心の状態、世界は、万葉的な言葉をいま用いていたらどうしても表現し得ない。現代は現代の語彙を使わなければならないのではないか、いわゆる造形的な意味のアルファベットを自分でこしらえていこうと考え、オブジェというものを始めたわけなんです。」



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自らの手で型をとった「手」シリーズ。
重ねてみるとそれほど大きな手ではないが、美しい指をしている。


黒陶は黒という色ゆえに無機的で彫刻的な表現が可能となるが、その代わりに高い造形性を求められるといいます。敢えてそれに挑戦し、見事完成度の高い作品にまでしました。


あふれる才能は、黒陶だけではおさまらず、同人であった益田芳徳先生と共に、先生の作業場である上越クリスタル硝子を訪れ制作をするのです。



そのときの作品がこちら
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しかし、非実用的なオブジェを作る一方で、生涯「茶ワン屋」を自称し、生活に根ざしたクラフトや作品としての器を作りつづけていました。

決して伝統を否定したり、軽視して前衛的な表現に走ったのでなく、陶芸では日本の中心地のひとつである京都で生まれ、その中でも五条坂という環境にいたこと、音楽や文学、古い陶磁器にも造詣が深く、そういった全てのことが彼の資質や才能に影響をし、考え抜いた結果が作品に現れていると言われています。

そこには上記のような、そもそも最初に「やきもの」というものを心の中でとらえたときの想いが、強く先生の中で残っていたからではないかと思います。

イサムノグチや辻晋堂ら、新しい美術の潮流にも大いに刺激され、精力的に制作を行いつつ、様々な活動(映画をつくり、文章が巧みで、詩を書き、音楽に通じ、話術にも長けていた、そうです)に天賦の才能を発揮された先生が60歳という若さで急逝されたことは、本当に残念です。



次週は鈴木治先生、山田光先生について見てまいります。




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【オブジェ焼  八木一夫・山田光・鈴木治・益田芳徳展】 
開催期間:2020年3月27日(金) ~ 2020年4月7日(火)
休業日:2日(木)

Exhibition of Object by Sodeisha:
YAGI Kazuo, YAMADA Hikaru, SUZUKI Osamu, MASUDA Yoshinori
Exhibition : March 27 to April 7, 2020



<八木一夫 / 陶歴>
1918年 
陶芸家・八木一艸の長男として京都市に生まれる
1937年 
京都市立美術工芸学校彫刻科を卒業
1947年 
『青年作陶家集団』の趣意書を発表する
1948年 
鈴木治、山田光、松井美介、叶哲夫とともに「走泥社」を結成する
1957年 
京都市美術大学(現・京都市立芸術大学)彫刻科の非常勤講師となる
この年初めて黒陶作品の制作を始める
1969年 
『八木一夫作品集』(求龍堂)が出版される
1972年 
東京伊勢丹で「八木一夫個展」が開催され、本のシリーズを発表する
1978年 
パリのグラン・パレで開催の「FICA78」にて「八木一夫陶彫展」と題し
    作品「Haiku I ~XI」を陳列、高評を博す。
東京伊勢丹で「還暦記念八木一夫展」が開催される
1979年 
心不全のため死去


(恭)



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