陶房の風をきく ~色絵磁器 前田正博展

冬なのに暖かい日の続いた東京ですが、ようやく寒さがやってきました。
キンと冷えた空気は、気持ちをキリッとさせます。

明日からは、2年ぶり3回目、前田正博先生の展示が始まります。
2019年には第68回神奈川文化賞を受賞され、ますますご活躍でいらっしゃいます。

展示前のお忙しい時間の中、工房へお邪魔してお話を伺いました。


IMG_8763.JPG
IMG_8753.JPG
作業中



●奥行のある作品が出来上がるまで
今回はほとんどの作品が轆轤で作られています。唯一、蓋物に型を使っています。


クセの少ない白磁の土を使うこと、その先の可能性が広がるのだそうです。

先生の作品は、通常の磁器土を使っているのに、土色も形も柔らかく見えるのはなぜなのか。それがずっと気になっていました。

通常、磁器は還元状態で焼くことが多く、パリッと強く、青白い器肌となるのですが、先生は酸化状態で焼くことで、アイボリー色のような柔らかい色味になるようにされているのだそうです。

触った感じもいわゆる磁器とは違い、柔らかく、どこか温かさを感じます。先生のお好みなのだそうで、削りの段階で意識して調整されているのだとか。

IMG_8751.JPG
IMG_8749.JPG
様々なお道具


IMG_8750.JPG
轆轤で引いて乾燥中の花入



白という色は一番強い色だとおっしゃる先生。
例えば、水指の内側はこのブルーにすることで、蓋を開けた時水がキレイに見えるよう意識されています。

水指15・茶碗36-2.jpg


器体をまず黒色に焼成する。

最近の電気窯では、時間と温度を管理するプログラムを組み込むことができますが、その日の気象などによる影響があるため、温度の上がり具合などを確認しながらご自分で管理されています。機械に弱いからね~と笑っておられましたが、十分な経験則に加えて機械ではやりきれない微細な見極めをされているのだと思います。

IMG_8759.JPG
先生がお使いの電気窯


例えば器体の黒色は、温度、湿度によってもマット調になるなど変化します。そのため、上絵の色への影響も少しずつ違って、明るめになったり暗めに見えてくるのです。


IMG_8752.JPG
焼成を待つ作品たち



器体内側の金色は、金の含有量がやや高めのものを使いながらも「金ピカ」にならないようにしています。焼き付けた際、下地の黒が透けて見えることも合わせて効果となっています。


IMG_8913.JPG




素地に櫛目を入れたり、格子柄のパターンを様々に駆使することで動きを出しています。

1mm、2mm、3mmの3種類のテープを使い分け、ラインを引いています。その時一切下書きはなく、頭の中でほぼデザインを決めているのだそう。
IMG_8748.JPG
使われている3種類のテープ

酒でも呑みながら夜のほうがこの作業がはかどるけれど、轆轤仕事はダメだね、と笑っておっしゃいます。いえいえ、この緻密な作業を呑みながらなんて・・・驚きです。



上絵に使用する絵の具は洋絵具。何度も重ねて塗れるという利点があります。

もともと油絵をされていた先生は、古いキャンバスに色をのせたり、削ったりされていて、磁器でもそういうことをやりたいと思ったのだとか。

和絵具はキレイだけれど塗り重ねには向かず、剥離してきてしまうため、あえて洋絵具を使用しています。それもあって、先生のブルーや赤はとても華やか。しかしながら、和絵具に比べるとムラが少ないため、均一になり過ぎないようにポンポンポンとはたくように塗るなど工夫をされています。

IMG_8747.JPG
IMG_8755.JPG
色ごとに分けられているお道具



窯焚きは「ぜいたく焼き」

若い頃は詰められるだけ詰めていたという窯焚き。今では、小回りのきくサイズを生かしてこまめに焚いておられるそうです。この日もちょうど窯出しをされていました。


IMG_8758.JPG
IMG_8760.JPG
まさに出来たてホヤホヤ。手に持つとホカホカでした。



窯は上絵で10時間。1時間に約100℃ずつ温度を上げ1260℃まで。冷ますのはもう少し時間をかけてるのだそうです。そしてこの日もこれからまた焚くのだとおっしゃっておられました。



●明るく楽しく美しく
いつも大らかな笑顔でいらっしゃる前田先生。こちらの拙い質問にも、丁寧に答えてくださいます。今回のテーマも「明るく、楽しく、美しく!」

「一生懸命やっているんだよ」とか、「焼き物は大変だよ」とか、いわゆる根性論的なことや、ネガティブな言葉は先生からは一切出て来ません。前向きに「明るく、楽しく、美しく!」という精神でいることがこんなにも自然に感じられるのは先生のお人柄ゆえでしょう。洗練されたデザイン性にも関わらずどこかホッとするのは、作品にその明るさが宿っているからのように感じます。




IMG_8914.JPG
人気のフクロウ。何万羽と描いたよ、とは先生談。


今回は久しぶりのデザインや、いろいろな色が愉しめる作品も多く作られました。

ぜひお近くで目を凝らしてその重ねの技法を、そして少し離れて、作品の放つチカラと優美な姿をお楽しみください。
ご来苑お待ちしております。




【色絵磁器 前田正博展】
開催期間:2020年2月7日(金) ~ 2020年2月11日(火)
Exhibition of MAEDA Masahiro
Exhibition : February 7 to February 11, 2020

<作家在廊予定>
2月7日(金)~11日(火)
*終日でない場合がございます。





IMG_8762.JPG
墨絵のフクロウ


IMG_8757.JPG
先生の本棚。最近は海外アーティストの抽象画が多いそう。








(恭)



※無断転載、再配信等は一切お断りします


黒田草臣ブログ: http://01244367.at.webry.info/
しぶや黒田陶苑のホームページ: http://www.kurodatoen.co.jp/