陶房の風をきく ~陶藝家の父 富本憲吉展 2週目

富本憲吉展も2週目となりました。

多くの言葉を残された富本先生。前回は白磁壺に並々ならぬこだわりを持っておられたことをご紹介しましたが、今回は色絵模様について。
先生がどんな風に模様を考案していかれたのかを見て参りたいと思います。


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陶器を愉しむ者は實用を無視して単にその形だけを見、
模様だけを見、また釉だけを玩ぶ可きでない。
譬喩を用ゐて陶器の美しさを見る上での考へをかくなら、
形は樹姿であり、釉はその樹の枝であり、模様は葉である。

(『製陶余録』美術陶器、より)


形は身体骨組であり、模様はその衣服である。
形ともようとは相互に関連して初めて一つの生命を造る。

(『窯辺雑記』李朝の水滴より)



形、釉、模様が決して別物ではないことをおっしゃっているように、白磁に取り組んだのちは色絵模様の試みへと進んでいかれました。


生涯、様々な模様をのこしておられますが、その中でも代表的なものといえば「四弁花」と「羊歯」でしょう。



「四弁花」
自宅玄関の袖垣に植えてあったテイカカズラという蔓草がモチーフとなっており、幼少の頃、花の中央に糸を通して吹くと、捻じれた花弁が風車のように廻った思い出のある花で、実際には白の五弁花である。五弁では連続模様とするには都合が悪いので四弁の花とした。


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四弁花のスケッチ
(富本憲吉陶磁文模様より)

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「羊歯」
羊歯は種類にもよるが大きいこの種では、一芽づつ延び、時計の針と逆廻りに追々と葉が開いて行く。この図の片方の葉のモトの部分が、次の葉と重なりあったところを現わした現したつもり。こちらも上下左右に連続しやすくするため四葉とし、菱形におさめた。


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羊歯のスケッチ
(富本憲吉陶磁文模様より)

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と、それぞれの模様について富本憲吉模様選集で述べています。

身近な生活の場から見た周辺の家並みや道沿いの景観、その辺に咲く名もない花、雑草などをモチーフにすることが多かった先生。
どのようなありふれた植物でも何度も角度を変え凝視すれば、かならずそこには装飾化できる要素が見いだせ、面白い視点が発見できるといいます。



茶の木にからみて未だ花なき烏瓜、銀色の葉、細き巻きひげ、
私はこの赤い實を好むものではあるが、
花なく實なき此の草にも亦心ひかれる。
普通、人は花をつけた草木にのみ心を惹かれるが、
それは間違つた考へであつて、
燈籠を置かぬ庭を庭らしく思へぬと同一理と思ふ。

(『製陶余録』武藏野雑草譜、より)



自分のうつり住む土地に、
此の強健で美しい花が、
無かったら實にさびしいだらう。

花屋に行って無い花、
然しそれ以上に美しい花、
新らしく移り住むだ此の武藏野にも、
この花の多いのを喜ぶ。

(『製陶余録』工場にて、より)


花屋に行って売っていないお花。そんな見逃してしまいそうなほどのものをスケッチするのです。
そして、そのたわいもないものの中から美的なものを見出す眼と、いつも新鮮な感性を合わせ持つ先生。




私は私自身の模様を見る時以下の事を念として取捨する。
模様から模様を造らなかつたか、
立派な古い模様を踏臺として自分の模様を造り
その踏臺を人知れずけ散らしてさも自分自身で創めた如く装うては居ぬか。

(『製陶余録』模様と工芸、より)




先生はやきものの美というものは、形、釉、模様などそれぞれ作品を構成する要素がどれをとっても欠けることなく、また出過ぎることなく調和することで生まれてくると考えていました。それを真摯に追及し続けた姿勢は、自らを陶工と呼んだことにも現れています。

引き続き白磁壺、染付陶板、色繪徳利など、様々な作品が並びます。
ご来苑お待ちしております。







【陶藝家の父 富本憲吉展】
開催期間: 2020年3月3日(火)まで。
*ビル休館日のため3月1日(日)はお休みいただきます。

Father of Japanese Studio Pottery TOMIMOTO Kenkichi
Exhibition : February 21 to March 3, 2020
※Closed on Thursday February 27 and Sunday, March 1








(恭)



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