陶藝家の父 富本憲吉展   ~作品紹介~

先日、辛夷(コブシ)の並木が並ぶ道を見つけた。
今か今かと、あの柔らかな産毛を蓄えた蕾が枝先にふっくらと膨らんで空を見上げていた。この週中は寒さが戻ってしまったが、今週末ぐらいに、あの辛夷の花は咲き出すだろうか……。
少し肉厚の花びらが、優しく花開く姿を思い描いていたら、富本憲吉先生の白磁の温かく、柔らかな雰囲気と重なって感じた。

さて、今週の金曜日からはその辛夷の花のような優しさを持つ『陶藝家の父 富本憲吉展』が始まります。
富本先生というと、まず思い浮かべるのは、あの美しい色絵の文様の連なりではないでしょうか。
しかし京都が伝統的に絵付師とロクロ師が分業であった時代、また、絵画を描くことが芸術とされる時代に先生は李朝、宋白磁に魅せられ白磁に取組まれました。
白磁は模様も何もない世界。
だからこそロクロ師が挽いた壷に釉薬を掛けたりするだけでは飽き足らず、自ら轆轤を回しました。
また、その先には、陶土や色絵の具の素材、焼成の際に使う灰に至るまで、独自に研究を重ねられます。

白磁拾年染付拾年
色絵又拾年
愚直なるわれ
陶器に志して
拾年にして一陶技の
自由なるを知る
千九百四十七年
只々老残を恥ず
人曰はく君は美術家たる資なし
努力によりて陶技を得たりと
この愚直、美術家としてその資なくば
老残の恥一層なるを深く感ず
千九百四十七年暮れんとして
除夜の鐘をききつつ
(老残作陶帖より)

本当に自信のある作品しか白磁の作品として残さなかったとされる富本先生。
今回は、その白磁作品を中心に二週に渡って作品を展示させて戴きます。
それでは数点作品をご覧くださいませ。

会場-2.jpg
会場-3.jpg
会場:白と黒の世界


3-1.jpg
3-2.jpg
3-3.jpg
3:白磁壷 
Vessel, White porcelain

6-1.jpg
6-2.jpg
6:天目釉大壷 
Vessel, Tenmoku iron glazed
対照的な色の二点。

一見、白磁の方が静かで穏やかな雰囲気がするかと思いきや、内包的な凛とした力強さのあるエネルギーを感じる。
また、黒い天目釉の方は、一枚ベールを纏ったような上品で柔らかな雰囲気を持ち合わせている。
天目釉の漆黒の黒に浮かび上がる鉄の茶色の粒が、満天の星空のよう。


4-1.jpg
4-2.jpg
4:白磁香爐 
Incense burner, White porcelain
周囲の情景を取り込み美しく映し出すような気さえ感じる、清らかな香爐。
火屋の星のような柄もスッキリとした姿に大変合っている。

10-1.jpg
10-2.jpg
10-3.jpg
10:白磁八角中皿 五客 
A set of 5 plates, White porcelain Octagonal shaped
白磁の皿の中心にはよく見るとイッチンで描かれた春蘭のようなお花が微かな凹凸をみせて浮かび上がる。
透き通るような純粋な花の美しさが際立つ、大変美しい作品。

29-1.jpg
29-2.jpg
29:色繪香盒 
Incense burner, iroe
箱書には香盒とあるが小さな陶筥として飾りたくなる作品。
染付で面ごとに囲い対角線をゆっくりとした線で引いている。
その中に赤や黒線で枠書きされた緑釉、黄釉の三色で菱文を配している。
小さいながらも大変味わい深い作品となっている。

32-2.jpg
32:色絵陶板
Pottery plate, iroe
上のような小さな色絵の陶筥を描いた陶板。
ザクロの実を大胆に構成した陶筥。
実際の陶筥も並べて見られたら愉しいに違いない。

17-2.jpg
17-3.jpg
17:色繪角飾箱之図 
Hanging scroll ‘Ornamental box’
こちらにも美しい図柄の四角い飾箱が描かれている。
端正な陶器の作品に対し、逆にたどたどしい様な独特のタッチで描かれる絵が、また味わい深く、心を攫います。

21-1.jpg
21-2.jpg
21-3.jpg
21-4.jpg
21-5.jpg
21:自製磁印三顆 
Hanging scroll ‘Handmade stamps’
描かれた陶印に彫られた文字を横に捺している。
黒い墨で描かれた中に捺された、朱印が、また絵になって、大変美しい。

陶片-1.jpg
陶片-3.jpg
陶片-2.jpg
肥前 中尾山発見 陶片図
Scroll‘Fragments of old pottery found in Mt. Nakao, Hizen'
生涯、スケッチから絵手紙、作品を含めて数多くの「絵」を残されている富本先生。
こちらは肥前、中尾山で発見された陶片を書き記したもの。
※会場には広げて置いてはおりませんが、ご興味ありましたらお気軽にお声がけ下さいませ。



会場.jpg
会場-4.jpg
会場:染付と色絵の世界



陶器の形は人体である。
人体はある者は肥厚、ある者は細身であり、その人体を被う衣服にあたるものが陶器では形に対する模様であり、釉であると思う。
形あって初めて装飾が必要となる。それが釉と模様である。すなわち形は主であり、装飾は従であるべきである。

そんな先生のお言葉が、スッと心に届くような会場となっております。


1963年 肺がんのため惜しくもご逝去された富本先生。
遺言には『墓不要。残された作品をわが墓と思われたし』と記されていたという。
この度、沢山の富本先生の作品を並べると、先生の真面目で、優しく、厳しいお人柄が手に取るように伝わってきます。
ひとつ、ひとつの作品に先生の命が宿っているように、先生とお話するような気持で向き合いたいと思います。
ご高覧戴けましたら幸いに存じます。







※尚、図録、DM掲載外の作品に関しましてはご予約は承れません旨、予めご了承下さいませ。
(葉)



 陶藝家の父 富本憲吉展 
Father of Japanese Studio Pottery 
TOMIMOTO Kenkichi

 第一会場: しぶや 黒田陶苑 
開催期間:2月21日(金) ~ 3月3日(火)
※休業日:2月27日(木)、3月1日(日)ビル休館日
営業時間 11:00~19:00

1st Term: at Shibuya Kurodatoen
Friday, February 21 - Tuesday, March 3, 2020 
※Closed on Thursday February 27, and Sunday, March 15
OPEN 11:00~19:00

 第二会場: 京橋 魯卿あん 
開催期間:3月9日(月)~21日(土) 
※休業日:3月15日(日) ・20日(金) 休業
営業時間 11:00~18:00

2nd Term: at Kyobashi Rokeian
Monday, March 9 - Saturday, March 21, 2020
※Closed on Sunday, March 15, Friday, March 20
OPEN 11:00~18:00


富本憲吉
TOMIMOTO Kenkichi

【陶歴】
1886年 奈良県生駒郡安堵町に生まれる
1904年 東京美術学校図案科に入学
1908年 ロンドンに留学。ウィリアムモリスの思想やホィスラーの作品に関心を抱く
1911年 六世乾山に入門するバーナード・リーチに通訳として付き添う
1926年 柳宗悦、河井寛次郎、浜田庄司らと『日本民藝美術館設立趣意書』に連署
1936年 九谷の北出塔次郎の窯で色絵磁器の研究と制作
1944年 東京美術学校教授に就任
1950年 京都市立美術大学教授に就任
1955年 第一回重要無形文化財に認定される
    「富本憲吉作陶四十五周年記念展」を開催する
1961年 文化勲章を受章
1963年 肺がんのため死去
     遺書には“墓不要。残された作品をわが墓と思われたし”と記されていた

【History】
1886 Born in Ando Village, Nara.
1908 Studied in London, and was influenced by Wiliam Morris and James Abbott McNeill Whistler.
1911 Become a translator of Bernard Howell Leach, who came to Japan to study under OGATA Kenzan the 6th.
1926 Submitted the proposal of establishment of Japan Craft Museum with YANAGI Muneyoshi, KAWAI Kanjiro, and HAMADA Shoji
1951 Awarded the Order of Cultural Merit.
1955 Selected as a Living National Treasure in enameled porcelain.
1961 Awarded the Order of Cultural Merit.
1963 "No grave needed. Regard my works as habitant of my soul."

2020 バイモ 蕾.jpg
2020 バイモ 蕾-2.jpg
当苑お庭:バイモ蕾
2020 蕗の薹.jpg
2020 蕗の薹-2.jpg
当苑お庭:蕗の薹



 京橋 魯卿あん 
 Rokeian
〒104-0031 中央区京橋2-9-9
TEL: 03-6228-7704 FAX: 03-6228-7704
http://www.kurodatoen.co.jp/rokeian/
営業時間:11:00~18:00 定休日:日曜日・祝日

※無断転載、再配信等は一切お断りします
黒田草臣ブログはhttp://01244367.at.webry.infoこちら
Twitterページ https://twitter.com/kurodatoen_こちら
Facebook ページはhttps://www.facebook.com/ShibuyaKurodatoenこちら
Instagram ページはhttps://www.instagram.com/shibuya_kurodatoen/こちら
しぶや黒田陶苑のホームページにhttp://www.kurodatoen.co.jp/戻る