陶房の風をきく ~新里明士新作展

寒いと感じたのはつかの間のこと。
早くも少しずつ春に近づいている、そんな東京です。
さて新里明士先生の個展が始まっております。

酒器展などグループ展には毎年お願いしておりますが、個展は3年振り。
お話を伺いました。



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●もっと焼き物を知りたい
磁器のイメージが強い先生ですが、日本とか海外とか枠にとらわれることなく…焼き物すべてが知りたい。といいます。アメリカやイタリア、イギリス、日本・・・様々な土地へ足を運び、そこの土を使い、作陶しています。
先生にとって、焼き物をもっと知りたいという欲求があるのは「産地のない千葉県出身であることが大きいのかもしれない」から。

「自分は美大出身でもなければ、今は美濃という土地にいるけれど焼き物の産地に生まれたわけでもない。そこにコンプレックス(あえてその言葉を使われます)があるんしょうね。」とおっしゃいます。

でもそれが自由にいろいろ知ることのできる立場にあるってことなのではないですか、と言う私に、うーん、そこまでまだ行ってなくて。と。

先生の言葉はいつでもまっすぐで感覚を大事にされているのだと感じます。



●ご自分のもつ作家性と産地特有のものの融合
そんな先生が今回挑戦されたのは「シガラキ」。

昨年のうち3か月程、信楽と自宅陶房を行ったり来たりされて、穴窯で作った作品なのだそう。今回全部で3点のお茶碗がありますが、2つは轆轤で、1つは紐作りで作られたとか。轆轤で陶土を引いても、どうしても磁土を扱うようなクセが出てしまうというのは面白いですね。

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新しい手、新しい土、新しい釉、新しい焼成・・・そこここの産地特有のものを見聞きし、実際に手を動かしながら、自分のもつ作家性というものを生かしたりすることで、新たなことがわかってくるといいます。そこには、新しい情報だけでなく、今自分がやっていること、やれることの再認識もあるのたとか。こういった様々な経験によって、デザインのパターンや造形だけでなく、環境や考えなども洗練されていくのです。また、この融合や乖離を感じることが、別の焼き物を知る面白みの1つなのだそうです。

そういう意味で、今回の轆轤で引いた2つのお茶碗と、紐作りのものでは、どちらに相対的に寄っているのかということがよくわかる作品となっているのではないでしょうか。


●色もまた弱点?

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今回も光器とともに色の作品も並びます。先生の中では「焼き物」という1つの枠の中に光器も、色の作品もあるのだそうです。
白(光器)作品ずっとやってきて、他の色を使うことはその合わせ方も含めご自身の弱点の一つで、自分の感覚の訓練みたいなものだといいます。特に色盃や青碗など色の作品は、色に色を重ねた深みを、光器は白一色なので白と光の関係を意識して作っているのだとか。

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また、今回は白作品に「白笥」という作品があります。こちらはお茶碗を作る磁土と同じもので、透光性が比較的高く轆轤が引きやすい土。焼締めを白土でやるのは今まであまり無かったなぁ、なんか新鮮だったとおっしゃいます。

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●うつろう時間が好き
先生は夜中に作業をされることが多く、今回も準備の最終日にはだんだん空が白んで来たといいます。その宵の時間が好きで、特にご自身の作る光器を通じて、うつろう時間をその光の通る感覚から感じられるのがいいとおっしゃいます。

当苑でもライトを当てて光と影をあらわします。これが自然の光を透すとき、どんなに柔らかな影を魅せてくれるのでしょうか。


会期は明日18日(火)19時までです。ぜひご来苑お待ちしております。




【新里明士新作展】
開催期間:2020年2月14日(金) ~ 2020年2月18日(火)

Exhibition of NIISATO Akio
Exhibition : February 14 to February 18, 2020

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(恭)



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