爪と土

「歩きスマホはやめましょう!」と、そこかしこで聞かれるフレーズ。それでも、初めて来た場所を探すのに携帯片手に地図を見るのは致しかたないことだろうとも思ったりする。信号待ちでちょっと覗くなんてのは誰しも心当たりがあるのでは。そう、その信号待ちで、思わずじっと見てしまった女の子の手元。スマホを片手で操作するのに便利なカバーリングにかけている指に視線が吸い寄せられた。爪を長く伸ばして、スクエアにきれいに整えているのだが、ジェルで長くしたのではなく自爪。その長さたるや、かなりのもので、白雪姫に出てくる毒りんごを持つ魔女の細く長い爪を思い出した。どこかに引っ掛けて折らないといいけどと、ちょっと気になった。


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そんな魔女のような尖った爪を見た後で、本日初日を迎えた『大桐大 新作展会』は何と、気持ちが丸く穏やかになることでしょう。大桐先生の大らかな作品群と、大きな体躯から醸し出される雰囲気であることはもちろんなのですが、先生のお客様に接していらっしゃるところを拝見すると、温かなお人柄が垣間見え、それ故の結果だと納得してしまいます。

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今週の花

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花器: 立壷

花: つるうめもどき・白玉

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先生のスッと立ち上がった壷の直線と曲線を描くつるうめもどき。

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つるうめもどき

つるのくねり具合が絡まって伸びていた様子が想像できます。

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つるうめもどきの実が熟してはじけ、中身のオレンジ色が顔を覗かせているのや、まだ緑色のコートを着込んでいる実も。


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白玉

白玉の蕾を活けたのですが、もう開いて一重の美しい花を咲かせました。


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花器: 花器

花: 寒菊

作品の花器も大桐先生ご自身が、花器と名付けていらっしゃいます。(笑)

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寒菊

寒菊の葉が見事に紅葉しています。

今週は3ヶ所に活けております。

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花器: 徳利 

花: さざんか

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大桐先生の作品に囲まれていると、陶芸作品の個展でありながら、彫刻作品を見ているような心持ちになる。花器然り、壷もまた然り。個人的に彫刻が好きな自分にとって、先生の造形は実に興味深く見飽きない。絵画も見る角度によって、多少なりとも違って見えるものだが、立体作品である彫刻はその比ではない。フーコーの振り子のように、立ち位置を変えて僅かな角度で目線をずらしても、違う姿が現れて意表を突かれる。全く別の作品と見紛うことすらある。

先生の作品も、彫刻作品のように、ぐるりと回ってもまだ別の面が見えてきて、行きつ戻りつしたくなる。初めて先生の作品を目の当たりにした時、単に形を作る作家ではなく、思索の方ではないか…と感じたのが二年前の個展。

ある彫刻家が禅を題材にした作品で、僧が矢を射るポーズをとる像を仕上げた。それに対し、「これでは、死んだ豚も射れない」と辛辣な批評で諭した師の言葉に奮起し、矢を持たぬ像を作りなおした。その作品を何度か目にする機会があったが、矢を持たずとも、今にも弦を引いて弓を射ろうとする真に気迫のこもった像であった。いや、弓はおろか、まるで引ききった腕の先にまで、何かが見えるような気すらして来たのを覚えている。究極まで考えに考え抜いて形にした彫刻とは、内に込めた精神性というものが、こうも表れるものかと感服した。

前回そして今回の先生の作品を拝見して、形状の造形だけではない何かを強く感じるのは、やはり先生の深い思索が具象化されたからに違いないと腑に落ちた。ご自身が蜂に刺されて3日間も制作をお休みしなくてはならなかったと、先生独特のユーモアを交えて笑顔でお話になる先生でいらっしゃるだけに、先生の底知れぬ思考に只々驚いてしまう。

それにしても、あのスマホの彼女が土をいじったら、いったい長い爪はどうなるのだろう?


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