満月の晩に

1112日の月は満月だった。用があり夕方外出しようと玄関に出ると、ちょうど月が東の空から上り始めたところ。大きなまん丸の月が目の前に迫ってきた。あまりのきれいさにしばし立ち止まって眺め入った。帰宅途中の誰もが、今夜の月を眺めてくれるといいな…と思った。と、どこからともなく犬の鳴き声が聞こえてきた。よく聞く普段の鳴き方ではなく、まるで狼の遠吠えのようなそれに、「そういえば、狼はイヌ科だった。」それにしても、荒野ならぬ住宅街でよく響く声は、あまりの明るく大きな満月の力に引き寄せられたとしか思えない、まさに遠吠えだった。


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そんな満月の日から、居待月の今日『作陶二十年 加藤亮太郎展』が初日を迎えました。月の出が遅くなって、座って待つ居待月。先生の作品を心待ちにしていらしたお客様は、月を待つように今か今かと待ちわびていらしたことでしょう。

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ご覧の通り、迫力ある茶碗の数々がずらりと並びます。一つとして同じ雰囲気の茶碗はありません。どうぞ実際にご覧になって戴きたいと思います。

表情の違う酒杯も沢山お作り下さいました。どれに決めようかと迷われること必至です。

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今週の花

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額: 石川九楊 「歎異抄」

花器: 織部花入

花: 白花万作・白玉椿

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亮太郎先生の書の先生でいらっしゃる石川九楊先生がお書きになった親鸞聖人の「歎異抄」の額。先生が、「ここに親鸞という文字が読めます。」と指さして下さいました。どうぞ、どこに書かれているか、皆さんも見つけてみてください。

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白花万作

黄色く色付いた葉から、茶色い枯れた葉に変化していく葉の一生が実によく見て取れます。

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白玉椿

白いぽってりとした花を咲かせる白玉椿。丸く愛らしい蕾です。


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花器: 織部花入

花: ウメモドキ 紅白

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先生の梅瓶に、ウメモドキの紅白の枝を紅梅と白梅に見立てました。

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紅白のウメモドキは樹皮も赤い実は赤味がかって、白い実は白っぽいことに気付きました。


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花器: 織部花入

花:椿 「野々市」

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「野々市」という名の椿。名前の由来は石川県野々市市で生まれたため、地名が椿の名になったそうです。蕾が薄っすらと色がかって見えますが、淡いピンク色の花を咲かせるようで、開いた花も見てみたいものです。


今回の個展で亮太郎先生が仰っていらした「脈動する焼きもの」という言葉。焼きものは、まず目で見て、次に手に取り、そして実際に使う。それは、我々が日常的に普通に行う一連のことである。だが、よくよく考えてみると、あくまでも表層的な解釈ではないだろうか。

他に置き換えて言えば、発話をただ単に相手に自分の言葉で意味内容を伝えるだけと捉えれば、それはロボットが成り代わってもいいわけである。しかし、実際は言い方・表現や声のトーン・強弱といったものが深く影響して、音声としてのみならず、我々に耳から入る音に加えて、ある種の感覚となって、より伝わってくるもの。

先生の様々な志野・織部・引出黒・黒織部といった作品の数々。例えば、「志野」。ずらりと並んだ表情の全く異なる「志野」の作品をためつすがめつ鑑賞すると、一括りで「志野」という呼称で表現すれば済むのではないことが理解できる。こめかみのあたりをを小刻みに軽く叩かれるように納得する。

そして一点一点、作品に対すると、その性格と言おうか、物言わぬ作品から各々の声が聞こえてくるようだ。脈打つ鼓動、あるいは微かな吐息にも似たものが個性の異なる作品から感じられる。それは、静かなる焼きものではなく、内から動的なものを発しているからに違いない。きっとそれは、そのまま亮太郎先生の作品への深淵な情熱や意思、手のひらから伝わる体温、あるいはトクトクと打つ脈であったり、空気感や…そういった先生ご自身と作品を取り囲むすべての物が沁み込んで湧き上がってくる感触のようなものなのだろう。

そう気付いた時、ふと満月の晩の犬の遠吠えが頭の奥でよみがえった。やはり、彼(彼女)も月が発する脈動にも似た美に、思わず感動の鳴き声を上げたのに違いないと。わたしも、心の中で小さな遠吠えをしてみた。


(藤)


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