時に天邪鬼
いよいよ本格的に我が家の鍋の季節が到来した。今年の冬は徐々に気温が低くなるデクレッシェンドのような下がり方ではなく、暖かい日があるかと思えば、翌日の気温は急降下⤵というような繰り返し。今か今かと出番を心待ちにしてるであろう新調した土鍋を明日は使おうとスタンバっていると、当日は暖かいとくる。ここ数日、やっと寒さが続き、自分は寒がりで着ぶくれているのだが、刷毛目の土鍋をデビューさせることが出来て内心喜んでいる。「また、お鍋~!?」という低いト-ンの声も聞こえてきそうだが。
昨日までのハッキリしない空模様を吹き飛ばすように晴れて『漆芸 太田修嗣展』が初日を迎えました。太田先生、今年も目新しい作品をお作り下さっています。
今回の個展で高杯やお盆に使われた穴開きの材。キクイムシや木に穴を開ける蜂もいるらしいから、その仕業か。あるいは何かしらダメージが加わって、枝が落ち朽ちたのかもしれない。太田先生の木目を活かしたものや美しい塗りを見慣れている者にとって、思わず目を留めてしまう。先生ご自身で、アナーキーに引っかけたとのことだが、作品に動的なリズムを生み出し、ある種のアクセントにもなる、とても心惹かれる作品となっている。造形としての面白みがあるのは言うまでもないが、他にも感じたことがある。
それは、大切にするということ。きれいな部分だけを使うのでなく、傷と一言で括ってしまうものに対しても、慈しむ気持ちの表れともとれる。
日々背の高くなるビルを眺めながら、2027年まで行なわれるという渋谷駅周辺の再開発。9つものプロジェクトが計画されているのだそうな。百年に一度という大々的な再開発で、きれいで整備された都市へと変貌していくのだろう。
でも、ふと天邪鬼な思いが脳裏を横切る。あの、シートにポップコーンの落ちてた映画館、レトロなプラネタリウムが懐かしいなあ。友人と一緒に先生にご馳走になったレストラン、ケーキセットを注文して長い時間喋っていたカフェ。そんな思い出のぎゅう詰めになったビルも、光り輝く建物になって久しい。真新しく計算されたビルや街は、確かに機能的で気持ちがいいもの。けれど、完璧なようで何かがない気がする。
穴の開いた材のような大切に温めるものをどこか探してしまうのは自分だけだろうか。
(藤)
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