凪ぐ

家の中で、何か音がする。金属音とか硬い物体が発する音ではなく、生きた音。音楽は聴いてないし、テレビもつけていない。なんだろう。家事の手を休め音の正体を探し始めた。ずっと鳴っていれば、まだ分かりやすいものを途切れるから、どの方向から聞こえてくるのかも分かりずらい。まるで、こちらの動きが分かるかのように、近づいたと思うと止んでしまう。廊下で立ち止まってみた。何も音がしない。しばらく動くのをやめてじっと立っていた。まるっきり静かになって、諦めかけた頃、やおら始まった。

リビングだ。その音の主の察しが付いた。抜き足差し足でリビングに近づくと、また止んだ。こうなったら、我慢比べ。鳴くまで待とうホトトギス……。

その主とは、コオロギ。いつの間に入り込んだのか、確かにリビングのどこかにいる。姿は見なかったが、しばし独唱に耳を傾けたひと時だった。



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『金重巖作品展』の初日を迎えました。秋晴れと呼べる日の少ない今年ですが、店内には、金重先生の青色で満ちています。空を見上げて青い空が見られない分、どうぞ美しい青と作品をご覧になりにいらしてください。きっと、心が晴れやかになることでしょう。


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青釉壷の見事な競演。
こちらには、織部の輪花皿、白磁向付、重宝しそうな小皿が並びます。

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今週の花

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花器: 10(図録 8) 青釉壷
花: 菊・リンドウ・丁字草

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丁字草

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つまみ細工のかんざしのように愛らしい菊の花。

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壷の正面にダイナミックに流れる青は先生が編みだされた手法で、なんと呉須。リンドウの白が一層引き立ちます。


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花器: 17(図録15) 青釉壷
花: 青葛藤(アオツヅラフジ)・満作

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満作
早春に細いリボンを垂らしたような花を咲かせる満作。秋には葉が黄色く紅葉して、こちらも美しい。

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青葛藤
アオツヅラフジという名のツル性の植物。ツルは非常に丈夫で、昔は物を縛ったり、籠やつづらの材料に使われたそう。

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少し肩の張った壷の上を丸い軌道を描くように、ツルが軽やかに踊ります。

なんとなく気持ちが冴えないことが、誰しもあるはず。狭い道で、向こうから車がくるのが見えて、道路の端によけて車を止めていたのに、挨拶もせずに通り過ぎて行ったとか、前日に揃えておいたバッグにハンカチを入れ忘れていたとか、他にも……(もちろん、心配事もあるかもしれない)。

ちょっとした個人的な不機嫌や、自分の思い通りにならないとか、ただ単に虫の居所が悪い場合もあるだろう。そんな時、自分の中で気持ちの不平不満をなだめることが出来ているだろうかとふと考える。イライラして、態度や表情に出たり、思わず強い語気で話したり、別の言い方ができたろうに、言葉にトゲが付いて、相手を傷付けていないだろうか?発してしまった言葉は、飲み込めない。聞いた相手は、たとえ小さくとも心にトゲが刺さる。そのトゲはどんなに極小でも、案外、長い間刺さっている。ことによると、抜けずに奥深く沈んでいく。我儘な感情は人前では出さないのが大人と分かっていても、心に空きスペースがないと、無意識のうちに人に不快な思いをさせていることが多々あるかもしれない。

そうならないように、心の容量を増やしておきたいと常に思う。しかし、我々の心はパソコンや携帯のように、重い画像や地図を削除して、ハイ完了とはいかない。意識して努力して心の余裕を持たなければならない。そんな時、心のシフトチェンジが素早くできるように心掛けたら、自分のざわついた気分や感情によって他者に嫌な気持ちを抱かせず、また自分も心穏やかになれるだろう。

今日がそんな日だった。いつもより早い電車に乗ったにもかかわらず、トラブル続きで電車は遅れホームも大混雑で、不機嫌の種が発芽しそうな一日の始まり。が、金重先生の青釉壷を一点ずつ、ゆっくりと見ているうちに、強い風が徐々におさまっていくように、気持ちが凪いでいくのを感じた。そんな風に、自分で自分の気持ち(感情)を馭すことができるように精進しないと…。


(藤)



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