陶房の風をきく~乾漆 鎌田克慈展

明日より、2年ぶり3回目となります鎌田克慈先生の個展が始まります。

乾漆は、この技法をされている方も少なく、それで器を作るということも珍しいこと。独立されて10年以上にわたり、その特性を生かした自由な造形を追求し、日常使いへの提案を続けられています。

今回のテーマは「端反の器と月」だという先生にお話を伺いました。

●改めて向き合った端反(はぞり)の器
「端反の器は以前から作りたいと思いながら、なかなか良い形が出来ず、避けていたところもあったかも知れません。
しかし、いろいろな器を作る中で、やはり作りたいという気持ちが抑えられなくなり、今回きちんと向き合うことにしました。」
そうおっしゃる鎌田先生。

そこで、生まれたのがこちら。


uneri70 端反椀
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陶器で作る型を思いの通りにゆがませるのが難しい。
半磁器土を使い、1210℃で焼く。


uneri68 端反筒椀
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腰に丸みを持たせつつ、口縁部の反りまでのゆるやかなカーブ。


No.72 端反平椀
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このお椀は木型を用いて。
これは特にカーブが難しく、何度も型の手直しを。




●もう一つのテーマ「月」
塗り立てや布目以外の新しいテクスチャを考えて、前から気になっていた石目地を試してみたそうです。

「石目地は昔から使われていた技法で、一見地味なかんじですが、器に使うことで料理をより引き立てることができると考えました。そして、意図的にムラをつけていろいろ試作しているなかで、それが月のように見えてきたのです。それ以来、夜に月を眺めては、どんな器を作るか考えています。」


皎月盆 尺2
0046.jpg縁の赤漆が月を、石目がその周りにかかった雲のように見えます。
お盆全体が雲をたずさえた満月にも。


令和最初の十五夜が明日13日(金)。なんともピッタリなテーマとなりました。


~漆技法~
◇塗り立て◇
蝋色仕上げをせず、上塗りが乾いたら完成とする。上塗りに油分を含んだ漆を使うことで塗ったままの光沢を楽しむ技法。
◇布目塗◇
地に布・紗しやを張り、その上に漆をかけて布目の模様を現した技法。使う布によって様々な模様になり、また耐久性に優れ、キズが目立たないのが特長。
◇石目塗◇
漆の表面に炭粉や乾漆粉などを蒔き、石の肌目のような凸凹をもたせる技法。細かい石畳のように見えるので石目と呼ばれている。



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大事なお道具たち。
これで漆を混ぜたり、のばしたりします。


kamata2019-2.jpgうるし



●「僕のスタート地点」
器を作るときにはいろいろなものを参考にするそうですが、先生のスタート地点は中国宋時代の磁器なのだそうです。
特に、「有名な馬蝗絆は、今でもやはりいいなぁと思います。」

青磁茶碗  銘:馬蝗絆(ばこうはん)   東京国立博物館コレクションより
https://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl&colid=TG2354



●形が自由になることの面白さ
一般的な乾漆の技法では型に石膏を使うところを、先生は何度も繰り返し使えるように木で作られています。また、uneriシリーズは陶器で型を作りますが、その陶器もご自分で土を練って形を作り、焼いています。



kamata2019-4.jpg何度も何度も、完成までにはだいたい12~13層ほど塗り重ねられる。
まだ麻布もくっきりと見える。


kamata2019-1.jpg型からとりだされたばかりの器たち。
これから赤や黒や溜色に塗られてゆきます。



型はそれ自体が器になるわけではなく、あくまでも器をつくるための型なので、仕上がる器を常にイメージしながら作ります。最近はだいぶ慣れたそうですが、型からはずしてみないと器の完成形がわからないので、型の段階で器の完成形をイメージするのが難しいのだとか。

それでも、乾漆の特性とその面白さは、形が自由になること。そして、

「乾漆で器をつくるということがあまり前例がないので、未知の部分が多く、それを自分で試しながら克服していくのも、悩むことも多いですが楽しいところでもあります。」とおっしゃいます。



●この技法を突き詰めたい
乾漆は、現在では作っている方も少なく、また現存する古いものも少ない中で、十数年以上、試行錯誤を続けられています。

ライフワークにしていきたいことはありますか?という問いに、

「ライフワークというのは今まであまり気にしたことがありませんでしたが、乾漆を10年以上続けてきて、最近はこの技法を突き詰めたいと思うようになりました。乾漆は残っている古いものも、現在つくっている人も少なく、まだまだはっきりわからないことも多いので、それを自分で明らかにしたいと思うようになりました。次から次に課題が出てくるので、人生の限られた時間でやり遂げられるのか?とたまに不安になります。」

そう教えてくださいました。

「それと同時に、石目のような新しい表情を試していくことや、最近は蒔絵や漆絵にも興味があり、少しずつ加飾の仕事もできたらいいなと思っています。」


多くの先人たちが長い時間をかけて切り拓いてきた道を、先生がどのようにつなげ、次世代に残していかれるのか。
そんなことを考え、月を眺めながら、一献傾ける。今週は、そんな秋の夜長をお過ごしになってはいかがでしょうか。



●いつもの漆、のススメ
漆器はどうしても手入れが面倒だとか、普段はもったいなくて使えないとか、毎日の食事へ登場させることへの抵抗感の強い器に思われがちです。

漆器にのせてはいけないものはありますか?と、よく聞かれるという先生のお言葉にあるように、それは恐らく、なかなか使わないために余計に遠い存在になってしまうから。

そんなときは、
「人が口に入れられるものはすべて大丈夫です。人が食べられる温度や酸味、油分や硬さであれば大丈夫です。」
そう答えるそうです。


実際に私もお味噌汁をいただくお椀は毎日漆器を使っています。ちょっとした小どんぶり(天ぷらの残りを天丼や、小腹がすいたときのぶっかけそうめん)にしてみたり、またお鍋の取り皿のように使ったりしています。油も、めんつゆも、肉や魚の脂も、全く気になりません。

使ったあとの洗い方も簡単です。柔らかいスポンジでお湯か水で洗い、すぐにタオルで拭けば大丈夫です。もちろん肉料理などの油よごれには洗剤を使います。


最近、先生が漆器を洗うのにとてもいいと思っているのが和紡ふきんだそうです。汚れがよく落ち、漆に艶が出るようだとのこと。
ただ、漆は自然の素材なのであまり洗剤でゴシゴシ洗うと、人も肌が荒れてしまうように、あまりよい表情にはならないようです。と付け加えてくださいました。

ちなみに…和紡ふきん、と検索しますと、たくさん出てきますので、すぐに手に入れられそうです。


ハレの日にはもちろん、毎日、他の陶磁器と一緒に使うことでメリハリも生まれる漆の器。赤や黒で食卓がぐっと引き締まります。また、朝食のパンやヨーグルトにも。和食以外にでもお気軽に使っていただけます。

手取りの軽さはもちろんのこと、お椀やぐい呑で口をつけた時に感じる何とも言えない温度と柔らかさは、陶磁器にはない良さだと思います。


ぜひお手に取ってご覧いただければと思います。
ご来苑お待ちしております。






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先生のご自宅兼作業場。そろそろ黄葉が始まるでしょうか。


kamata2019-6.jpg整然と貼られたメモやキレイに片づけられた作業場。
奥には漆を乾かすためのムロも。




kamata2019-7.jpg図面に向かって試行錯誤されている先生





【乾漆 鎌田克慈展】
2019年9月13日(金)~17日(火)
11:00~19:00
会場:しぶや黒田陶苑

先生のご在廊日: 9/13(金)~15(日)




◆鎌田克慈プロフィール◆
1977年 東京都三鷹市生まれ
2000年 東北芸術工科大学芸術学部美術科工芸コース卒業
2000年 石川県立輪島漆芸技術研修所きゅう漆科入学、塗師・赤木明登氏に師事
2003年 石川県立輪島漆芸技術研修所 きゅう漆科卒業
2004年 年季明け(弟子が終わる)
2005年 御礼奉公
2006年 独立し、現在は主に東京で個展を中心に活躍中


(恭)



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