鶴首の王妃


講談社青い鳥文庫から出版されていた児童向けの『クレヨン王国』という人気シリーズがあります。クレヨン王国の王妃様はなかなかの我儘王妃で、『クレヨン王国十二か月』という一冊では、ある日王様が呆れて家出をしてしまい、王妃は12個ある悪癖を一年かけて直しながら王様を探すという旅に出ます。

さて、癖を直して戻ってきた王妃は…。


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あらゆる無駄をそぎ落とし、洗練された姿。
13歳から轆轤職人として20年以上の下積み時代を経て得た技術の賜物は、気品に溢れ、引き締まった空気をまといつつも、何かあたたかいものを感じさせる柔らかい魅力を保っています。


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あたたかみを生み出すその柔らかい線は、りんごや卵といった多くの人が親しんでいる有機物をモチーフにしていることから生まれているような気がします。


完璧さは、時に人の心を冷たく排除します。

しかしこの花器に花を活けた時に生まれる絶妙な調和は、完璧な器形にのせられた美しい釉薬の表情が生み出しています。

徹底的に研究された釉薬の二度掛けによる擦れた肌感、禾目に流れる微細な模様が、究極のフォルムに自然美という味を加えて、生きている花の生命感と非の打ちどころのないフォルムの仲立ちをしてくれるような、大きな役割を担っているように思えます。



陶器の部位を人間に例えて表現する私たちです。

何かを見た時に生まれる連想が、そのもの自体にくっついて、思い入れというカタチに変わっていくときに生まれる愛情は、人への想いと同じです。


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さて、クレヨン王国の 悪癖を直して完璧になって戻ってきた王妃様は、その状態を保つことがつまらなく、疲れる日々。私の〇十年前の記憶では王様もそんな完璧な王妃よりも、個性が強く刺激的な王妃が恋しくなってしまった、と読んだ記憶があります。そんな王妃はまた旅に出て…完璧を装うのを辞めて戻ってくるのです。

それは、幼い私には、より完璧な…バランス感覚に優れた王妃様になって戻ってきてくれたように感じて、とても幸せで、頼もしく、より王妃様を好きになった思い出があります。

無機的な完璧さと対比としての、自然な温かみ。
私にはどうしてもこの鶴首が王妃のように見えてしまうのです。

フリーベリは生涯、数万から数十万点もの作品を作ったと考えられておりますが、当時出回った作品は7000点ほどだったと言われています。
それほどの数を制作していく中で培われた美へのバランス感覚の結晶を、ぜひともご堪能いただけたらと思います。





ベルント・フリーベリBerndt Friberg

1899年スウェーデン生まれ。

1934年よりダスタフスベリ製陶所に籍を置き、1941年より自らの工房を設立。

生涯、数千によぶ器を自ら轆轤で制作、日本や中国、朝鮮の古陶磁から影響を受け、フォルムや釉薬を追及した。

その釉薬や肌など、女性的な美しさを感じさせる繊細で優美なものが多い。

作品はメトロポリタン美術館ほか世界各国の美術館に収蔵されている。

ミラノトリエンターレにて1947年、1951年、1954年に金賞。



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高台内側にはグスタフスベリ製陶所の美術作品にのみに許されたハンドマークのサインと共に制作年代を表す「g」の文字。 『g1965』と言われ、フリーベリが精力的に活躍したと言われる黄金期の作品と分かります。


花器
箱有(With wood box)
380,000
8.5×H26.0


 (た)


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しぶや黒田陶苑

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