陶房の風をきく ~備前細工物のこれから -土が紡ぐ物語-

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今回、島村光先生と細工物を手掛ける作家さん14名による細工物展を開催いたします。


島村先生は当苑で何度も個展をしていただいており、こちらの皆様での展示は岡山県内ではすでに3回発表の場があったそうですが、東京では初のお目見えとなります。


そこで、開催に向けて、島村先生と皆様に少しずつではありますがお話をうかがいました。



~島村光先生~

▽開催に向けて

すでに岡山では3回ほどやっているが、東京でやるということに意義を感じている。
若手は一生懸命やっているが、タイトルにもあるように細工物の「これから」というものを考える1つのきっかけになれば良いと思っている。


▽少しずつ増える細工物作家

自分が細工物を始めた頃は誰一人やっている人がなく、作り手も買い手も選択肢が無かった。
今では備前に限らず細工物をやる作家は少しずつ増えてきている。女性作家も多い。

それは作り手側にも、轆轤ものではないものをやりたいという欲求が出て来たことも大いにある。

その中で、細工物というのは人の心の癒しというものに位置しているのだと感じている。


▽近道はないが「抜け道」はある

これからの若い作家達に何度も何度も繰り返し伝えているのは、
オリジナリティーを出せということ。未完成でもいい。決してコピーをしてはいけない。

この道に近道はないが、ただ「抜け道」はある。
みんなが見つけられる抜け道ではなく、「自分だけ」の抜け道を見つけること。

そう簡単なことではないが、新しいことにチャレンジしていけば、見えてくる。
それが見つかれば生活も出来る。焦ってはいけない。


▽箆100本で一人前

今回の展示では、箆(ヘラ)仕事を見てもらいたい。
細工物をやるというのは、箆をどれだけ作って、いかに使っているかということである。

作品に合わせて必要な箆を自分で削り出し、作る。
100本作ったら一人前、つまりそれがその人の財産なのだ。


▽皆様へ

息を止めて、箆仕事の数々をどうぞご覧ください。





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No.1
島村光 / 備前フィニッシュ 
SHIMAMURA Hikaru /  Artwork  The end of Japanese Zodiac

1942年 岡山県長船町(現瀬戸内市)に生まれる
1962年 浪速短期大学(現大阪芸術大学短期大学部)絵画科卒業
1978年 長船町に穴窯築いて独立
1990年 備前市久々井に移り、登り窯を築窯
1997年 しぶや黒田陶苑にて初個展「十三支 おくれてきたねこ」を開催
2017年 島村光・金重有邦・隠﨑隆一展 岡山県立美術館
岡山県重要無形文化財保持者・備前市指定無形文化財保持者
岡山県文化奨励賞・山陽新聞賞「文化功労」賞

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【質問】
・今回のテーマをお客様に見ていただきたい点もあわせて教えてください。

・ご自分の思う備前焼または細工物の魅力はなんですか?

・また、その魅力はご自分の作品にどのように生かされていると思われますか?

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No.2
伊勢﨑 卓 / 青備前牡丹獅子香炉 
ISEZAKI Taku / Incense Burner Ao-bizen, Lion

1963年 伊勢﨑満の長男として生まれ
     父・満にその陶技を習得
1987年 大阪芸術大学陶芸科卒業
1991年 岡山県展入選
以降各地で個展を開催する

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【ご回答】
A.今回の作品のテーマは獅子で備前細工物といえば獅子と言われてますが細工物というジャンルを多くの皆様に知って貰いたいです。

A.備前焼の魅力は無釉、登り窯で薪による焼締めが魅力ですが備前焼細工物は焼けに頼ることではなく作りの善し悪しが重要な所が魅力であり悩ましい所です。

A.備前焼を作る上でしっかり技術をつけた上で現在に合うものを作っていきたいと思います。





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No.3
柴岡 力 / 琉金 
SHIBAOKA Chikara / Artwork, Goldfish

1974年 備前焼窯元・柴岡陶泉堂に生まれる
1994年 備前陶芸センターにて研修
1995年 祖父 二代目柴岡香山、父 三代目香山のもと作陶に入る
岡山県展・日本伝統工芸中国支部展・一水会展等に入選
日本工芸会中国支部・備前陶心会・備前育陶会に所属

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【ご回答】
A.海中、水中、水辺に生きる物を中心に製作しています。モデルとなる生き物の「動き」、その最も絵になる一瞬を切り取り、表現できたらと、思っています。

A.「備前焼といえば壺・花器」というイメージを、大きく変えることの出来るジャンルであること。焼き物でこんなものが造れるのか!というお客様の反応を如実に体感しています。

A.作陶の際、なるべく過去の備前細工物では造られなかったモチーフを選ぶよう心がけています。こんな作品も備前焼にはあるんだ!という驚きをお客様に感じていただきたいです。





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No.4 
髙原 武 / 天拝獅子 
TAKAHARA Takeru / Artwork, Lion

1992年 髙橋昌治に師事
2006年 岡山県美術展入選 以降3回
2010年 瀬戸内国際芸術祭参加 以降2012年
2011年 岡山天満屋にて個展
2014年 備前陶心会展 NHK岡山放送局長賞 以降3回

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【ご回答】
A.今回は動物をメインに出品させて頂いています。表情、これから動くであろう躍動感を感じて頂ければと思います。

A.無釉で出せる存在感、土の力を見て頂きたいです。

A.伊部下り松地域の原土を精製後、10年暗室で寝かせ作品に使っています。





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No.5
瀧川 卓馬 / 多喜 
TAKIKAWA Takuma / Artwork, Baby Taki

1977年 兵庫県に生まれる
2002年 島村光に師事
2013年 備前市久々井に工房を構える

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【ご回答】
A.この作品は去年産まれた子供がモデルです。子供ができてからいいことやありがたい話が次々と舞い込んでくるので福の神としてつくりました。名前は特に意味を持たせずカタカナでタキですが福の神としてつくったので多喜にしました。

A.派手ではないけれど存在感を感じるところが好きです。

A. さりげなく飾りたくなるようなものや人に贈りたくなるような縁起物をつくれるよう心がけているつもりです。





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No.6 
竹内 千恵 / うさぎ  
TAKEUCHI Chie / Artwork, Rabbit

1976年 岡山県和気郡に生まれる
2002年 備前陶芸センター修了後、同年4月より
     窯元備州窯にて山本雄一に師事
2006年 父 竹内靖之のもと、日々作陶に励む

岡山県備前焼陶友会・育陶会・薫風会 会員

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No.7 
竹﨑 洋子 / 一之雲 
TAKEZAKI Yoko / Artwork, Cloud

1975年 東京に生まれる
1995年 育英工業高等専門学校デザイン工学科卒業
1996年 備前陶芸センター 修了

森泰司氏に6年間師事

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【ご回答】
A.「作品」と「タイトル」です。何かを表現したい。想いを形にしたい。という漠然としたイメージを形にするに当たって「タイトル」は私にとってとても大事なモノになります。私の作る作品は具象的・抽象的どちらにあっても、名前(タイトル)を得て火が灯るように、命も吹き込まれると考えています。

A.備前焼はとても歴史が深く伝統的でありながら、自由であり、あらゆる可能性を感じます。

A.助けられている。と思います。





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No.8 
藤原 喜久代 / 陶花リース「葡萄」 
FUJIWARA Kikuyo / Artwork, Grape wreath

1963年 故・藤原 建の次女として備前市穂浪に生まれる
帝塚山大学卒業後 備前陶芸センター入所
陶芸家 辻 清明、協夫妻の元で修業
1990年 初窯

女流陶芸展 入選、伝統工芸中国支部 入選、岡山美術展 奨励賞 ・入選
岡山県備前焼陶友会 理事、備前育陶会 前会長、日本工芸会中国支部 会員

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【ご回答】
A.
備前焼は土と炎の賜物だと思っています。壺、花入には花が主役になる様に、皿、鉢、徳利、ぐい呑には料理、酒が主役になる様に。(「器は料理の着物)という言葉もありますね)。

使いやすさや、主役の為の一歩控えての作品づくりです。

それに対して細工物は直接主役という事を念頭に、作品づくりに向かう姿勢に違いが生まれます。

しかし共通するのは「人の心を揺さぶる存在」であり、そんな作品を生み出したいと思っています。

この度出品させて頂く作品では、自然界の花や実をテーマに、その溢れんばかりのエネルギー、喜びや優しさ が、伝わる事ができれば嬉しい限りです。





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No.9 
三浦 義広 / Bird
MIURA Yoshihiro / Bird

1987年  大分県生まれ
2008年  鹿児島大学工学部建築学科 中退
2012年  岡山県立大学大学院 デザイン学研究科 造形デザイン学専攻 修了

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【ご回答】
A.私は、既視感のない生き物の姿が見たくて制作を続けています。幼少期から、生き物の形に興味がありました。見たことのない生き物の形に出会ったとき、他では味わうことのできない喜びを感じていました。それは今も変わりません。しかし、知識が増えてくると、現実の生き物では、既視感のある形しか見ることができなくなりました。故に私は見たことない生き物の形を自ら生み出そうとしています。私の表現したいものは、生き物の姿かたちです。生態や感情は必要ありません。ただそこに形が存在しているだけが良いのです。

制作の手法としては、日々の生活の中から図形を見つけ、その図形を生き物の姿にしています。目に映る風景、動植物、感情や音など、を切り取ってデフォルメすることで、図形を見つけています。図形を見つける時や生き物の姿を創造するときは、夢うつつにいるような感覚になります。その状態は心地よく、半無意識化で想像する生き物は、どれも奇抜な造形になっていきます。

制作の上で、主に影響を受けているものは、シュルレアリスムと日本の精霊信仰です。シュルレアリスムの無意識や夢想状態を重視する点と不条理を肯定する点は、私の芸術的アプローチと重なります。また、古来の日本では、何にでも霊的なものが宿るという考え方がありました。現在もそのような考え方が引き継がれています。私のイメージする生き物は具現化された精霊の要素が含まれています。

焼き物で細工物を作ることの魅力についてですが、私は陶土の持つ可塑性やテクスチャーにどこか生き物に似た生々しさを感じています。また、高温で作品を焼くと、想像していなかった焼き上がりになります。窯を開けた瞬間に、新しい生き物の姿に出会えたような喜びを得られるところに魅力に感じています。





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No.10 三奈三 / BUS
MINAMI / Artwork, BUS

2005年 作陶を始める
2018年 岡山天満屋、広島天満屋・細工物展に出品

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【ご回答】
A.今までの形にとらわれない新たなスタイル。備前焼の、土、炎の力強さ・温かさを感じて欲しい。

A.一つひとつ創り上げていく中での繊細さでありダイナミックさ、そしてそのユニークさ。

A.躍動感。





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No.11 
宮本 泰枝 / 肉球
MIYAMOTO Yasue / Artwork, Paw pads

1981年 岡山県に生まれる
2004年 倉敷芸術科学大学卒業
2009年 備前焼作家 島村光に師事
2015年 独立

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【ご回答】
A.集合体の織り成す面白さとほんの少しの気味悪さを感じて頂けばと思っております。

A.土であるからこそ表現出来る繊細さ、温かさ、柔らかさそして荒々しさを立体的に表現出来るものであり、常に様々な形に変えて、身近にあるものです。

A.土の塊が表現者によって、変幻自在に形を変える事が出来る面白さであり、手に取って下さった方が、笑って下されば嬉しいです。





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No.12 
森 一朗 / void
MORI Ichiro / Artwork, void

1981年 伊部に生まれる
2006年 東京藝術大学 美術学部彫刻科卒業
2008年 東京藝術大学大学院 美術研究科 彫刻専攻 修了
2014年 伊部に穴窯を築く

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【ご回答】
A.基本的に、備前の古典より形や、技法、などを学びそれを自分の表現の中に織り交ぜて作品としています。

細工物としての作品の多くは備前の獅子をモチーフに少し自分の意図をアレンジして制作しています。特に、獅子の毛の表現に興味を持っています。獅子は時代や、場所により形を変化させてきています。自分なりに思う今の在りようを形にできたらとおもいます。

A.備前焼の魅力は、この地域の土が紡ぐ長い歴史。土の多様性、そしてそれを受け入れる幅の大きさ。特に薪窯での焼き上がりなど、自身のイメージとズレてくる、そのズレ。

備前の細工物の魅力は、古いものなどは柔さかさや、ユーモアなど、人間味を感じるところ。形だけだと、人形にも通じるものがあるが、用途を持ったものも多くあることに興味があります。

A.voidという作品に関しては同時に"うつわ"としても成立するように開いた穴からの内部空間への繋がりを意識して制作しています。





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No.13 
森本 直之 / 目白置物
MORIMOTO Naoyuki / Artwork, White-eye

1991年 岡山県備前陶芸センター修了
     森宝山窯、森泰司に師事
2000年 備前市佐山にて独立

日本伝統工芸中国支部展・岡山県美術展覧会にて入選
東京・大阪・岡山・倉敷で個展開催

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No.14 
好本 康人 / カバリンゴ
YOSHIMOTO Yasuhito / Artwork, An apple on Hippo

1976年 岡山県備前市伊部に好本宗峯の三男として生まれる
2000年 東京造形大学 美術学科美術専攻Ⅱ類(彫刻)卒業
2004年 父 宗峯に師事し作陶を始め、主に細工物を手掛ける
2006年 下津井、木里神社に宮獅子一対を納める

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【ご回答】
A.「時(とき)」をテーマにそれぞれの時間を表現したく制作しました。

A.細工物は轆轤によって成形されるものとアプローチが全く違い、制作にかかる時間やエネルギーがダイレクトに影響されるところが魅力であると考えています。

A.動きや表情、何を感じてもらえるかを表現する時に必要なものだと思っています。





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No.15 
渡邊 琢磨 / ミライノカセキ No.156
WATANABE Takuma / Artwork, Future Fossil ‘No.156’

1968年 兵庫県に生まれる
1991年 関西大学卒業
     備前にて山内厚可に師事
2007年 窖窯を自作築窯
2009年 還元用小窯を自作築窯

備前陶心会会員 日本陶芸美術協会会員

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【ご回答】
A.『ミライノカセキ』は、スチームパンク、サイバーパンク等のSFをモチーフとしています。
時として備前焼の質感や色に、金属の光沢や錆びた雰囲気を纏う場合があり、そのマチエールを活かし「いつどこで作られたか判らない機械が、未知の文明に於いて化石のように発掘されたら……」というストーリー性へと想いを馳せて頂ければ幸いです。

A.プリミティブな無釉焼締め技法ながらも、発色の多彩さと質感の多様さがある点。

A.侘び寂びならぬ、『割れ錆び』の情景。





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当苑でもこれだけ多くの新たな作家さんを一堂にご紹介するのは、なかなかありません。

図録以外にも追加で作品をお持ちいただいております。

その中には、新しいチャレンジを見せてくださるものも。

いつもとはちょっと違う、初めての出会いが多くあります。




会期は明日7月5日(金)より7月9日(火)19:00までとなっております。

ぜひ足をお運びいただきまして、ゆっくりと癒しの時間をお過ごしください。

ご来苑お待ちしております。






作品へのお問い合わせはコチラまで
しぶや黒田陶苑
TEL: 03-3499-3225
Mail: info@kurodatoen.co.jp






(恭)








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