『備前細工物のこれから -土で紡ぐ物語-』 ~作品紹介~

この度、しぶや黒田陶苑さんのご好意で「備前細工物のこれから」展を開催させていただくことになりました。
このところ備前では若い陶工の皆さんが本気で細工物に取り組んでおります。
六古窯やその周辺においても細工物(フィギュア感覚)の作品も多く作られています。
息を止めての箆による手仕事の数々を楽しんで戴ければ幸いです。

島村光


【出品作家】 

伊勢﨑卓・柴岡力・島村光・髙原武・瀧川卓馬・竹内千恵・竹﨑洋子
藤原喜久代・三浦義広・三奈三・宮本泰枝・森一朗・森本直之・好本康人・渡邊琢磨 
(敬称略・五十音順)




私にはかつて10年程陶芸を嗜んでいた過去があります。
先生方の前で話すには烏滸がましいですが、土と向かい合うときはいつも雑念を忘れました。
ある時は土に操られるように形が生まれ……、時に面白いほどに自分の思いのままに掌で形を変える……
そんな言葉では言い表せないような土の魔力のようなものを常に感じていました。

さて、今週の金曜日からは、当苑でもお馴染みの島村光先生を中心に集結した備前の細工物を手掛ける若き作家さん方の展示会『備前細工物のこれから -土で紡ぐ物語-』を開催いたします。

島村先生を始め、15名の備前の細工物を手掛ける作家さんの作品が並びます。
その作風は様々。何だか面白い世界観となっております。

それでは、作品のご紹介をさせて戴きます。




島村 フィニッシュ-2.jpg島村 フィニッシュ-1.jpg
DM:島村 光 / 備前フィニッシュ


1942年 岡山県長船町(現瀬戸内市)に生まれる
1962年 浪速短期大学(現大阪芸術大学短期大学部)絵画科卒業
1978年 長船町に穴窯築いて独立
1990年 備前市久々井に移り、登り窯を築窯
1997年 しぶや黒田陶苑にて初個展「十三支 おくれてきたねこ」を開催
2017年 島村光・金重有邦・隠﨑隆一展 岡山県立美術館

岡山県重要無形文化財保持者・備前市指定無形文化財保持者
岡山県文化奨励賞・山陽新聞賞「文化功労」賞

■言わずと知れた、備前細工物の巨匠。
息が詰まりそうなほど、難解な知恵の輪のような作品から、可愛らしい陶人形まで、本当に幅広い作風をお持ちです。
今回は、今年の干支にちなんででしょうか、「亥」。
ちょうど、今年の折り返し地点でもあります。
逆立ちのような姿も、何だか一年の折り返しを表しているようです。


2 伊勢﨑 獅子-2.jpg2 伊勢﨑 獅子-3.jpg
2:伊勢﨑 卓 / 青備前玉獅子香炉


1963年 伊勢﨑満の長男として生まれ
     父・満にその陶技を習得
1987年 大阪芸術大学陶芸科卒業
1991年 岡山県展入選
以降各地で個展を開催する

■備前細工物といえば獅子は代表的なモチーフのひとつ。
備前細工物とは何たるや……と言うことを、作品を通して語りかけているように感じます。
左手で押さえる玉は蓋物となっております。


3 柴岡 琉金-1.jpg
3:柴岡 力 / 琉金
4・5 柴岡 ロボット-1.jpg
4:柴岡 力 / BIZENYAKI-ROBOT / 5:柴岡 力 / BIZENYAKI-ロボとロボイヌ


1974年 備前焼窯元・柴岡陶泉堂に生まれる
1994年 備前陶芸センターにて研修
1995年 祖父 二代目柴岡香山、父 三代目香山のもと作陶に入る
岡山県展・日本伝統工芸中国支部展・一水会展等に入選
日本工芸会中国支部・備前陶心会・備前育陶会に所属

■いつも、水の中に暮らす生き物を中心に制作されているという柴岡先生。
張りのある胴の膨らみは鱗の下の筋肉を感じ、優雅になびく尾びれは今にも大きく動いて、この梅雨の湿気を帯びた空間を泳ぎ出しそう。

また、この他にこれとは全く異なるロボットの作品もこれからの試みとしてお送り戴きました。


1 髙原 闘牛-1.jpg1 髙原 闘牛-2.jpg
1:髙原 武 / 闘牛


1992年 髙橋昌治に師事
2006年 岡山県美術展入選 以降3回
2010年 瀬戸内国際芸術祭参加 以降2012年
2011年 岡山天満屋にて個展
2014年 備前陶心会展 NHK岡山放送局長賞 以降3回

■筋肉隆々の力強い牛。
作品の内に秘める先生の想いが、筋肉となって盛り上がり、作品を支えているようです。


1 瀧川 たきちゃん-2.jpg1 瀧川 たきちゃん-1.jpg
1-2・1-1:瀧川 卓馬 / 多喜
3 瀧川 獅子-2.jpg
3-1:瀧川 卓馬 / 狂い獅子


1977年 兵庫県に生まれる
2002年 島村光に師事
2013年 備前市久々井に工房を構える

■この作品のモチーフは、昨年生まれた先生のお子さんがモデルなのだとか。
時として、子供は純粋に自分の意思をぶつける芯の強さを感じます。
この小さな「多喜ちゃん」も、一生懸命に足を踏ん張って、とても頼もしく感じます。

また、三匹の獅子が互いを追うように作られた、狂い獅子の作品は、窯焚きの際灰の溶け具合を確認する為窯の中から取り出す色味という窯道具を作品にしたものだそう。
こんな素敵なお道具でお仕事できるのは、とても素敵だと思いました。
ペーパーウエイトなどに使っても愉しそう。


DM 竹内 ウサギ-1.jpg
DM:竹内 千恵 / うさぎ


1976年 岡山県和気郡に生まれる
2002年 備前陶芸センター修了後、同年4月より
     窯元備州窯にて山本雄一に師事
2006年 父 竹内靖之のもと、日々作陶に励む
岡山県備前焼陶友会・育陶会・薫風会 会員

■5月、富士山の自衛隊の演習場で溶岩の影や窪みに何匹もの兎が隠れているのを見かけました。
こちらが気付かず近づいてしまい、驚いて飛び出してくる兎達。
こんな風に静かに耳をそばだてて隠れていたのかもしれません。


1DM 竹﨑 一之雲-1.jpg
1DM:竹﨑 洋子 / 一之雲 


1975年 東京に生まれる
1995年 育英工業高等専門学校デザイン工学科卒業
1996年 備前陶芸センター 修了
森泰司氏に6年間師事

■ふっと漏れた吐息のような、柔らかな雲。
緋色に色付いた雰囲気が、ホッと心を和ます温かさとなっています。


2 藤原 紫陽花-1.jpg2 藤原 紫陽花-2.jpg
2:藤原 喜久代 / 陶花リース「額紫陽花」


1963年 故・藤原 建の次女として備前市穂浪に生まれる
帝塚山大学卒業後 備前陶芸センター入所
陶芸家 辻 清明、協夫妻の元で修業
1990年 初窯
女流陶芸展 入選、伝統工芸中国支部 入選、岡山美術展 奨励賞 ・入選
岡山県備前焼陶友会 理事、備前育陶会 前会長、日本工芸会中国支部 会員

■無釉であるが故か、備前のやきものを見ると、自然のものに限りなく近い存在を感じます。
本作品は、今花開く紫陽花。
それぞれに違う表情の葉が重なったり、真ん中に集まる小さな花や、周りを囲む四枚のガク。
それは自然そのものの美しさに魅了されて作られているように感じます。


DM 三浦 Bird-1.jpgDM 三浦 Bird-2.jpg
DM:三浦 義広 / Bird


1987年  大分県生まれ
2008年  鹿児島大学工学部建築学科 中退
2012年  岡山県立大学大学院 デザイン学研究科 造形デザイン学専攻 修了

■何とも面白い物の捉え方。
これらは、動物をモチーフにして作られたもの。
皆さん、それぞれ何の動物がモチーフかお分かりになるでしょうか。
動物の形を図形として捉え、究極の形にデフォルメされた作品は、我々の思考の回路を良い意味で打ち破ってくれる。
作品と向き合っているうちに、頑なだった自分自身が柔軟に開放されていくような気分になってくる。


DM 三奈三 BUS-1.jpg
DM:三奈三 / BUS


2005年 作陶を始める
2018年 岡山天満屋、広島天満屋・細工物展に出品

■物語の世界に迷い込んだような雰囲気溢れる作品。


DM 宮本 肉球-1.jpgDM 宮本 肉球-2.jpg
3・DM1:宮本 泰枝 / 肉球


1981年 岡山県に生まれる
2004年 倉敷芸術科学大学卒業
2009年 備前焼作家 島村光に師事
2015年 独立

■ずっと猫の肉球をモチーフに作陶を続けていらっしゃる作家さん。
年月を経て、それが集合体のオブジェとなって表現されるようになった。
可愛らしいモチーフが集合した時の存在感、集合したモチーフとスッキリしたシャープな要素を掛け合わせた面白さ、何だか気になる作品となっている。


1 森 毛玉-1.jpg
1:森 一朗 / void


1981年 伊部に生まれる
2006年 東京藝術大学 美術学部彫刻科卒業
2008年 東京藝術大学大学院 美術研究科 彫刻専攻 修了
2014年 伊部に穴窯を築く

■備前の個展作品を学び、ご自身の意図やアレンジを加えて作品の制作を行っているそう。
こちらは備前の代表的なモチーフである獅子の毛の表現にフューチャーして作られたもの。
癖のある巻毛が丸まって、何だか面白い。


3 森本 カリメロ-1.jpg3 森本 カリメロ-2.jpg
3:森本 直之 / ひよこ置物「カリメロ」


1991年 岡山県備前陶芸センター修了
     森宝山窯、森泰司に師事
2000年 備前市佐山にて独立

日本伝統工芸中国支部展・岡山県美術展覧会にて入選
東京・大阪・岡山・倉敷で個展開催

■今にも動き出しそうな雛たち。
力の限りに割ったタマゴの殻も、本物と見紛うほどの薄さ。
繊細で柔らかな羽から覗く黒目がちな瞳が大変愛らしい。


1 好本 カバ-2.jpg1 好本 カバ-1.jpg
1:好本 康人 / 「カバリンゴ」
3好本 カエル-1.jpg3好本 カエル-2.jpg
3:好本 康人 / 「雨アガル」


1976年 岡山県備前市伊部に好本宗峯の三男として生まれる
2000年 東京造形大学 美術学科美術専攻Ⅱ類(彫刻)卒業
2004年 父 宗峯に師事し作陶を始め、主に細工物を手掛ける
2006年 下津井、木里神社に宮獅子一対を納める

■小さな面でモチーフとなる作品を捉えた、面白い作品。
何だか昔、美大を受験した際に毎日のように描いたデッサンを思い出した。
大きな面から、段々と小さな面で捉えて実際に見ているモチーフに近付けていく作業。
あの頃の、キラキラと輝く若かりし自分に立ち返るような懐かしさを覚えた。

また、上とは打って変わった作品も。
のんびりと釣り糸を垂れるカエルの後ろにも、リアルなカタツムリが通ります。


W2 渡邊 カセキ-1.jpgW2 渡邊 カセキ-2.jpg
W2:渡邊琢磨 / 「ミライノカセキ No.274」シーラカンス


1968年 兵庫県に生まれる
1991年 関西大学卒業
    備前にて山内厚可に師事
2007年 窖窯を自作築窯
2009年 還元用小窯を自作築窯

備前陶心会会員 日本陶芸美術協会会員

■お魚の中に、メカニックなパーツが嵌まっている。
先日目にしたニュース記事のひとつに、世界の色々なところでお腹の中からビニールやプラスチックの部品など、普通だったら口に入れないようなものを飲み込んだ生き物たちが数多く見つかっている……と。
『ミライノカセキ』とはSFをモチーフとしているそうですが、意外と、近い未来、本当にこんな化石が見つかるかもしれません。
時として無機質なように感じる備前土の雰囲気を存分に活かした、面白い作品。





無釉の飾らぬやきもの“備前焼”の中で生み出される作品ですが、全ての作品を並べると、それぞれの作家さんでこんなにも様々な表情や、表現の仕方があるのかと驚かされます。
それは、備前焼の枠を超えて、やきものの世界が明るく広がるようです。











※尚、図録、DM掲載外の作品に関しましてはご予約は承れません旨、予めご了承下さいませ。

(葉)




備前細工物のこれから -土で紡ぐ物語-

Bizen Crafted Works -A tale created by clay-
開催期間:7月5日(金) ~ 7月9日(火)
Exhibition : July 5 to July 9, 2019
11:00~19:00










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