陶房の風をきく ~染付 岩永浩 展

当苑での個展は4回目になる岩永先生。
今回は主に向付をいろいろ、形、デザインと多種多様に作り、届けてくださっています。

先生の中でも向付を作るのは一番好き、だそう。絵だけでなく、轆轤も大好きだとおっしゃり、小物であれ、丸いものだけではなく、押したり、ひねったり、型打ちしたり、といろいろされたようです。

そこで、展示を前に先生にお話を伺いました。



●釉薬が包む呉須のやわらかさ
水墨画を学び、その手法を焼き物に生かすとき、墨の濃淡、筆致をどう表現するか。
そのため、呉須の発色に心を配ったそうです。

呉須の発色は釉薬一つで変わります。
天然の灰にもいろいろありますが、安定さを考え、松の灰を使うことに。作ってくれる灰屋さんを熊本に見つけ、作ってもらったものだそうですが、思ったように安定した良い青白磁の透明釉になったので、それをご自分の呉須と合わせているそうです。

一口に染付といっても、先生のオリジナル「花唐草文」の「青」は優しく、濃淡でいうと、とても淡く柔らかに感じます。釉薬がすべてを包んでくれ、呉須は発色します。こうして作った天然松灰釉で発色するやわらかさ、そこに自分らしさが出ているのだと思います、と教えてくださいました。




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●「岩永染付」を求めるきっかけ
花唐草文は、「自分の染付」というのをやろうと決めたきっかけの柄。

古いものの写しではなく、自分なりの花唐草にしたいと思い、古いものを研究し、自分のパターンに作り上げて完成したものなのだそうです。





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●絵柄は全てオリジナル。合わせ方もオリジナル。
これだけ多くの絵柄を、自由自在に描いていく、その方法やいかに。下書きは特にされないということでしたが、一つの器の中にいくつかの図柄を描くときの取り合わせはどうしているのか気になりました。

花、鳥、岩など中心になる図柄を決めて、それに他のものを絡めていく、というやり方で、下書きは全くなく、自分の頭の中にあるだけ、とキッパリとおっしゃられました。




●すべてを自分の手で
今回一番見ていただきたい点は何かお聞きすると、

有田は、自分で全てを作りません。外注か型ものです。自分はそれを請け負う生地屋の家に生まれました。
だから、自分が個展が出来るようになったら、全ての行程を自分で作ると決めていました。

形が出来て絵柄が出てくる、逆に絵柄が出てきてそれに合う形を作る、同時進行のこともあります。だから、全てを自分の手でやるということ、それは、多種多様な形状と、絵柄が生まれるということ。そして、全て自分で轆轤を引いた生地を使っています。

そういったことを見ていただきたいです。






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●作り手であると同時に使い手でもあること
先生のインスタグラムを拝見すると、忙しいお仕事の合間にほぼ毎日手作りのお料理をご自身の器で召し上がっているのがわかります。

元々お料理が好きで、食べ歩きも大好きだという先生。お料理人さんにもお友達が多く、食べに行きながら学んだのだそうです。
やっているうちにどんどんこだわり始め、今では有機栽培のお野菜も裏の畑で作っておられます。畑にある野菜のことを考えて、買いものに行ってから、3日分ずつ決めてお買いもの…

特に食のうつわというのは、見た目以上にサイズや使い勝手が求められます。ご自分でお料理を作られる女性のお客様が多いのも、こういう使い手目線がしっかりと伝わるからでしょうか。

また、毎日食器棚に入る暇のない器をつくりたい、とおっしゃることに納得。ガッテンしてしまいます。日本人の食卓は、和洋中、日々違っており、私もたくさん器を持っていますが、何となく普段使うものは数点に限られてきます。棚に収まりっぱなしの器も少なくありません。

毎日使う器になる、そこには実感にともなった作りが大いに影響していると言えます。







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●これから挑戦したいこと
お茶道具、特にお茶碗をいつか作りたいと教えてくださいました。

もう少し年を重ねるまで、具体的には岩永浩の茶碗も一つくらい持っておきたいなと思ってもらえるようになる年齢まで、作らなくても良いですが、いつか作りたい。花入れはこのまま少しずつ増やして、以前作ったことのある水指なども早くやりたい。と。

先生がお茶碗をつくる日を迎えるとき、どんな絵柄を選ばれるのか、呉須はどんな発色にさせるのか、とても楽しみです。





●優しくて、穏やか。そして何事も愉しむ姿
昼間はもっぱらFMラジオを聴きながら作業をされているそうですが、お弟子さんが帰ったあとは21時まで「デカイ音」でROCKです。笑

そう言って、優しく笑いながら教えてくださる姿。目に浮かびます。

しかも、そのFMラジオも、普通に入る佐賀放送局ではなく、大きなFMアンテナを立て、FM福岡を聴いているとか。
そういうひと手間も全然おっくうがらずにされるところが先生らしいような気がします。


お仕事終わりは、消毒液、ヨード臭のするピートの効いたISLAY(アイラ)地方のシングルモルトを。ご自分で干したお魚や、畑のお野菜をたくさん。炒め物、天ぷらからお鍋まで、肴はもちろん手料理。

これについても、干すだけでとっても美味しくなりますよ、と。…そういえば、先生のお宅にお邪魔したとき、専用の干し網が吊るされてました。


今回のこの質問をやりとりさせていただいた時というのは、個展までのとにかく大詰めの時期でした。大忙しのお仕事の合間をぬって、夜ごはん用に昼間から手羽先の煮物を仕込んでおいた、フワトロだよ~と聞いて、飛んでいきたい気持ちでした。

何から何まで自分の手でされる、仕事でも料理など普段の生活でも。その姿勢からは、「大変さ」よりも「愉しんで」いることをいつも感じます。





お仕事のお話は、熱く熱く熱く、先生の好きなROCKを感じますが、普段は穏やかで優しいトーンでお話され、ヒーリング音楽を聴いているようです。


今回は向付の他にも、酒器、猪口、小皿、飯茶碗もたくさんご準備いただいています。

ぜひ、実際にその手に持ってみてください。何を盛り付けようか、どう使おうか、考えがどんどん膨らんでくると思います。また、普段お料理されない方でも、ちょっとやってみようかしらと思うのではないかと思います。


会期中、先生は全日程ご在廊の予定です。
ご来苑お待ちしております。




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【染付 岩永浩展】Exhibition of IWANAGA Hiroshi
開催期間:2019年7月12日(金) ~ 7月16日(火)19:00まで
Exhibition : July 12 to July 16, 2019





(恭)


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